「祈りの幕が下りる時」
泣けるぼろ泣ける。
東野圭吾読まなくなって久しいけど、こんなのも書いてたのかあ。
「麒麟の翼」は見たけど、あまりいい印象ではありませんでした。理知的過ぎ、整理され過ぎというのが当時の印象。しかし本作は全く違います。見直しました。
技巧的なのは相変わらずで、前半は登場人物が入り組み過ぎてついていくのがやっとだけれど、後半は親子の情を前面に出し続けてうまくまとめています。
自分を犠牲にしても子どもの幸せを願う親の強い想いというのは、少子化時代を迎えた近代の我々のひとつの帰結なのでしょうか。
そして、親に感謝しつつも、生き疲れて常世の生を願う親に手を貸すのは、高齢化社会を迎える我々の帰結になるのでしょうか。
難しいです。
そこのところを、きっちり対照的な構図として見せているところが、すばらしく理知的です。そしてその理性臭さを臭わせずに泣かせる物語に仕上げたところが凄いです。理も情も弁えて物語を紡ぐ力はやはり超一級。
ちなみに、主人公の刑事の台詞「俺はマザコンだからな」というのが本作のミステリを解く鍵だとすれば、容疑者のファザコンこそが本作の事件の源になっているのも妙に対照性があります。どこまでも巧みに要素を組み込もうとする作家の習い性なのでしょうか。削り落とす美意識はないのでしょうか(笑)
役者も誰も彼もがいい演技で、素晴らしい出来のミステリがまた一本。
邦画って本気出すと質が高くて嬉しくなります。