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2017.12.13

「DESTINY 鎌倉ものがたり」

平安時代から続く転生で繰り返される縁(えにし)とか、どういう少女漫画な設定なんですか。でも良いので赦します。

鎌倉にそんなオカルトな空気はむろん無いと思うけど、主人公の彼女は最初っからあやしい。河童か座敷童にしか見えない。変な骨董品にぴぴっとくるみたいだし。

その彼女がまあいちいち可愛らしい。新妻の姿態全開です。堺正人の旦那とお似合い。それだけでほっこりしますね。良いです。

そんないい関係の夫婦なんてそうはいないと思うのは我々の僻みです。良いなーと思いつつ日常を改善するお手本にしましょう。


さて、愚にもつかない感想を連ねるのはこの辺でやめにして、この作品で一番よかったことを言います。主人公夫婦のほっこり感でもなければ、奥様の優しさでもなければ、貧乏神の恩返しでもなければ、亡くなった編集者転じた魔物の漢気でもありません。

最も良かったのは、悪役の天頭鬼が、如何にも悪役らしい悪辣さで主人公を苦しめたにも関わらず、夫婦を捕らえるのに失敗し逃がしてしまうときの、「ああ、また行ってしまうのか~」という悲痛な嘆きです。

普通、悪役というものはここで、恨みつらみを言ったり、罵声を浴びせたり、何かに八つ当たりしたり、地団太を踏んだりするものですが、彼、天頭鬼は、ただただ、悲しみを露わにするのみなのです。

なんという人間味のある魔物でしょう。
彼もまた、この鎌倉という、人と魔物が隣り合って生きている世界の一部なのです。決してそれと対立するものではありません。

この一言で、世界がぐっと広がる感じがします。歴史がぐっと凝縮される感じがします。

グザヴィエ・ドランはそれを、登場人物に画面サイズを押し広げさせることで表現したわけですが、そういった技巧に頼らなくても、練り上げた物語の文脈の頂に、一言を投じるだけで、それは実現できるのです。

良いですね。この作品は。

能うなら、彼、天頭鬼にも、幸が訪れんことを。

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