「ザ・サークル」
少し以前は、匿名のネット空間で、名前を隠した大衆が常識を逸脱して暴走する恐怖が、映画のテーマとしては面白かった。「NERVE」とかね。
広大なネットに個人の人格を移植してとかいう荒唐無稽な話と違って、匿名の雲に隠れた群衆というのは現実の脅威ですから。
対して本作は、実名でなんでも無邪気に晒してしまう人について、同じく名前を隠した大衆が、常識を逸脱して暴走する恐怖が描かれている。
元凶はいずれも同じ、暴走するのは名前を隠した大衆ということで。そこはあんまり変わっていない。ということで目新しい点はありません。
いや、ひとつあった。
不幸な事故が起きた後、それでも主人公は、意を決してネットに繋がり、そこにたくさんの励ましを見つけるのだ。それに勇気づけられて、ある対応策を考えて実行に移すのだけれど、そこはまあ見てのお楽しみ。
一応のケリをつけた後、最後に主人公は、これも新しい現実として受け入れているようだ。多少疲れた顔に、それでも微笑みを浮かべながら。
なんでもインナーサークルで処理されていた時代に戻るよりは、いろいろ軋轢はあっても、基本はオープンな方がいい、と言っているように、私には思えました。
エマ・ワトソン、いい役に当たったな、という感じ。