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2017.11.05

「婚約者の友人」

戦争で婚約者を失った女性の前に、彼の友人を名乗る男が現れます。生前の男どうしの友情や思い出話に心打たれ、一人息子を亡くした両親の心も癒す人柄に惹かれ、ほのかに恋心が芽生えます。

なんて美しいお話でしょう。

でも、そうじゃないんです。
フランソワ・オゾンですよ。それで終わるわけがなかった。

後半は、衝撃の告白から絶望。帰郷した彼を追って今度は、女性の方が、かつての敵対国を旅します。彼の男が来たときの道を逆向きになぞるように。

辿り着いたその男の故郷で、彼女の希望はどんな迎えられ方をするのでしょうか。

主人公の女性の忍耐強さ、義理の両親に対する強すぎる気遣い、自分を押し殺して周囲の和を優先する行動様式、抑えた中にも激しく動く心情、そういったものは、現実に生きる我々には馴染深いものに見えます。

対置されるのは、来訪者の男の神経質なほどの感情の揺れや、後になってわかる恵まれた境遇などです。

分かってみれば、身分違いの恋でしかなかったのですが、やるせない。
我々はそれを、やるせない、と表現することを知っていますが、この監督は、最後のカットでそれを表現しています。私はあまり好きにはなれません。

でも現実ってそういうものかもしれないなとも思いました。

だからこそ、我々はそこを、見苦しくないように、やるせない、と言ってやり過ごそうとするわけですが。

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