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2017.10.14

「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」

これは驚きです。
堂々たる風格を感じさせる力作。

ひとつの文明が滅んで、別の一つが立ち上がっていく、盛衰の物語のなかに、ヒューマニティを備えた骨太なリーダーの悲劇、葛藤、闘いと成就を、深く静かに描きます。

たぶん、本年最高の作品と言っていいでしょう。派手だけれど深みの点では疑問を抱かざるを得ない昨今のSFアクションに慣らされた頭をぶん殴られたような気分です。

映画作品の技巧としても光るものが随所にあります。

たとえば導入部分の森の音は、観る側が日常を離れて、この作品の落ち着いた太いリズムに呼吸をあわせられるよう十分に長くとっています。そういうところを我々は見過ごしがちですが、とても重要なことなのです。家庭の画面が大きいだけのビデオでは得難いことでもあります。

それに続いてエイプたちの棲家に忍び寄る人間の兵隊たちの肩に、かけられた手と、その意味が、この世界を生き延びている存在達の複雑な状況を、観る側に一瞬で悟らせて、深みに引き込みます。こんなはっとさせられる手法はなんだか久しぶりな気がします。

これはほんの序の口ですが、このわずかな時間の中にさえ、作り手の強い集中と優れた手練が感じられて、とても嬉しいです。

ぜひ劇場で味わってみてください。

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