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October 2017

2017.10.28

「ゲット・アウト」

いやーなんでしょうかねこの映画は。

アフリカ系への差別を描く問題作かと思わせておいて、実は単なるオカルト映画だったという。

まあいいんですけどね。

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2017.10.27

「ブレードランナー2049」

ネタバレなしで手短に。

前作の時代には深堀りが難しかっただろう点について、かなり突っ込んで描いていました。

前作が「感情」に焦点を当てていたのに対して、本作は、自分とは何か? 記憶とは何か? 我々が無意識に依拠しているリアリティとは何か? を問いかけてきます。そして、問いを超えたところに何があるのか、あるいは無いのかも、最後に示唆します。

ネットの影響で変容するコミュニケーションと人工知能とが一定のリアリティを持って語られる時代に、まさに課題として浮上してくるであろうことを捉えていると思います。

んで、ちょっとだけ長く感じました。

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2017.10.21

「女神の見えざる手」

毒をもって毒を制すという宣伝文句がぴったりくる快作。
あるいは、身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、とも言う。

ここで前者の毒は、倫理や遵法精神を問わない手法を指す。まあ、小さな悪だ。

それに対して、設定されている大きな悪は、米国の銃規制反対派の思惑ということになる。本作は、大きな悪を制するために、小さな悪を容赦なく駆使する人間を描いている。

闘争の主軸は、銃規制法案をめぐる議会多数派工作のシーソーゲームだ。はじめは、主人公が力を貸す規制賛成派が快調に支持を増やしていくのだが、衝撃的な事件が起きて流れが逆転し、ついには主人公個人への粗探しから失脚へとつながっていく。

あれあれ不完全燃焼で終わるのかと思ったら。。あとは見てのお楽しみ。この辺り、エンタテイメントとして見せ方がうまい。

そしてもうお馴染みになったインターネットの劇的な活用。ネットが無かった時代には、こういう話はマスコミ産業の中でもみ消されてしまいがちだったのを知っていると、なおさら感慨が深い。

さらに、スパイ映画さながらの諜報活動。国家間の闘争という背景とは違う、新手の権謀術数が楽しめる。

* * *

ところで、毒を毒で制する構図は、大きくは主人公と規制反対派の暗闘を指すのだが、実は、銃規制反対派の主張そのものが、同じ理論に拠っていることに気付いただろうか。銃には銃で対抗するという、それだ。

この構図を、シーソーゲームの流れを変える転換点で使っているのが実に皮肉が利いている。どういうことか。

銃規制賛成派の女性が、少し頭がいかれた男に路上で銃を突き付けられ脅されているのを、通りがかりのタフガイが自分の銃で射殺する事件が起き、このタフガイを銃規制反対派が英雄として祭り上げて、キャンペーンを有利に逆転していくのが、お話の転換点になっている。主人公はこのあと、水に落ちた犬のように叩かれていく。

しかしもし、倫理的な理由でこの作品の主人公を嫌悪するならば、同様に、銃という毒を使って銃による脅しという不正義を制したタフガイの行為も、同じく嫌悪するべきなのではないか。毒をもって毒を制する方法論そのものが、アンフェアだと思うのならば、だ。

そういう矛盾を、この作品は銃規制反対派に問いかけているかのようだ。タフガイが恰好よく理性的に描かれているので、それに惑わされて、気付く人は少ないかもしれないが。

銃規制反対派が常に持ち出す理論が、実は、作品の中で銃規制賛成派が使った手段を問わないやり口と、同根の問題を孕んでいるぞ、と。これを皮肉と言わずに何と言おう。


その他にも、従来型の賛成派のフェアなクリーンファイトを、否定はしないが成果は出ない自己満足として退けるなど、まさに毒。その毒の背後に、正しい目的に常に照準を合わせ妥協しない潔さを含ませ、かつ、プロフェッションとヒューマニティについての寡黙な実例を、再逆転のとばくちに持ってきて、もー最高にいい感じの作品に仕上がった。

傑作と言っていいのではないでしょうか。

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2017.10.19

「ブレードランナー ファイナルカット版」

やっぱり死すべき定めを描いた作品はよいですな。

実はTVでちょっと見ただけで劇場では見ていなかったのですが、2049公開に先立って、前作のファイナルカット版の爆音上映会というのがあったので、予習してきました。

昔の映画なので、メカなどはレトロフューチャーですが、それ以外は、今の作品群とそれほど見劣りしない。むしろ少ない台詞で情景を描けていてよいです。

反逆レプリカントのリーダー、ロイ・バッティが、最後の死闘でなぜデッカードを生かしたか。彼は余裕で弱き人間の刑事をひねりつぶせたはずです。自分の命が終わるのがわかっていたのだから、せめて道連れにと思ってもおかしくはなかった。それがなぜ。

たぶん彼は、伝えて欲しかったのではないでしょうか。自分が見てきた壮大な宇宙の営みを。それに比べて悲しいほど小さく短い奴隷としてのレプリカントの生を。

語り継がれることで、短い自分の命が、永遠の物語として残ることを望んだのではないか。そんな風に思えました。

胸打たれます。
いやーよいですな。

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2017.10.14

「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」

これは驚きです。
堂々たる風格を感じさせる力作。

ひとつの文明が滅んで、別の一つが立ち上がっていく、盛衰の物語のなかに、ヒューマニティを備えた骨太なリーダーの悲劇、葛藤、闘いと成就を、深く静かに描きます。

たぶん、本年最高の作品と言っていいでしょう。派手だけれど深みの点では疑問を抱かざるを得ない昨今のSFアクションに慣らされた頭をぶん殴られたような気分です。

映画作品の技巧としても光るものが随所にあります。

たとえば導入部分の森の音は、観る側が日常を離れて、この作品の落ち着いた太いリズムに呼吸をあわせられるよう十分に長くとっています。そういうところを我々は見過ごしがちですが、とても重要なことなのです。家庭の画面が大きいだけのビデオでは得難いことでもあります。

それに続いてエイプたちの棲家に忍び寄る人間の兵隊たちの肩に、かけられた手と、その意味が、この世界を生き延びている存在達の複雑な状況を、観る側に一瞬で悟らせて、深みに引き込みます。こんなはっとさせられる手法はなんだか久しぶりな気がします。

これはほんの序の口ですが、このわずかな時間の中にさえ、作り手の強い集中と優れた手練が感じられて、とても嬉しいです。

ぜひ劇場で味わってみてください。

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2017.10.08

「ブルーム・オブ・イエスタディ」

いや、君ら本気で頭おかしいわ。異常だわ。
ほんと見ていてイラつく(笑)。
この脚本書いて台詞考えた人の頭の中を見てみたい。

というくらい、本物感のある異常さが、普通のふとしたやりとりから、ぽろりと随所で顔を出す前半。

とても居心地が悪い。でも見続けてしまう。

劇場の椅子で、そんな風にじたばたしているうちに、いつの間にか、スクリーンの方は、不器用な男とそうでもない女の恋愛に変容します。
これがなかなか刺さる。

で、まあ世評ではそこを見て、これは恋愛映画ですねウフフ、みたいなことにされているらしい。そういう態度が大人であると。

でも私の感想は、ちょっとそれとは違う。

この不格好な恋愛の裏側には、ヨーロッパ人が抱え込んでいる深い淵があって、私のようなおっとりした戦後平和日本人には、ちょっとショックだった。

そもそも欧州の近代は戦争で発展してきたようなところがあるわけだし。その挙句の二度の大戦なわけで。

あんな生々しい傷を抱えて、あっちの大陸の人たちは、日常を生きているんだ。

それを、不格好だけれど、恋愛と絡めて、共感を呼ぶ形で見せてくれた。
力作です。

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2017.10.01

「散歩する侵略者」

いやこれ割といい映画。流行ってないけど気になってたので、見逃さなくてよかった。

邦画らしい切れ味の鈍さとかは、これはもういつものことだから諦めて軽くスルー。

そうすると、結構いいものが見えてくる。

SF小道具を使って、人からある概念を抜き取るとどうなるか、そこから推して、その概念は如何なるものであったのか、ということを俳優の演技で見せる。

家族とか、所有とか、自由とか、自分とか、仕事とか、邪魔者とかを、順繰りに見せていく。
この概念を侵略者に抜き取られると、その人は、それまどとは打って変わった態度や行動をとるようになる。その変化がおもしろい。

そういうお話のプラットフォームを作っておいて、これは最後はアレに関する禅問答だなと予想して見ていると、ほぼ想像どおりの展開。

と思ったら、実は、一回踊り場で折り返す。教会の牧師の方が一枚上手でした。職業としてそういうものを扱っていると、やっぱり一般人ではかなわないですね。

肩透かしを食ったけど、まあ、アレを突き詰めると碌な映像にはならなそうだからよかったなと重荷がなくなった気がして。

それで、いったん見る側の関心は、侵略の方へ移る。アクションとか多少あったり、厚労省のお役人がなぜかマシンガン軍団を引き連れて現れたり。ちょっと波乱。最近、厚労省、映画に出てくること多くないですか? しかも重武装で。

ま、それはそれとして。

最後は・・・やっぱりそれかー。
まあいいじゃない。

ホラーでは全然ありませんので、お間違えの無いように。
ヒューマニティの映画です。

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