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2017.09.02

「ELLE」

映画の広告では、変態とか何とか煽り中心になっていて、この作品の価値を正面から見ていない。しかし、直接作品を見てみると、これはオンナという生き物をかなり正しく描いているように見える。特にその図太さと現実主義を。

話の行間を読めば、この主人公の女は確かに変態で淫乱なのかもしれない。敬虔なクリスチャンだったはずの父親がなぜ突然大量殺人を犯すに至ったのか、あるいはなぜ、彼女が刑務所へ面会に来ると知って首を括ったのか。その理由は最後までまったく触れられず語られないが、巧みに埋め込まれたいくつかのシーンから、微妙に察しはつく。

けれども、日常感覚では不徳とされるものを内に持ち、時折発露させることもありながら、それに支配されるでもなく、表の性格と内のそれとがひとつの人格として共存しているように見える。

これを包容力と言ってしまうと、それも違う。上位の高潔な人格が包み込んで表面化しないようにしているわけではないのだ。ただあたりまえに共存している。

図太い、と言い表すのがしっくりくる。ほかの女たちも似たり寄ったりかもしれない。母親は言うに及ばず。親友も、そして隣家の妻も。

とりわけ、この隣家の妻には、最後に驚かされた。彼女は夫の性癖をおそらく知っていたのだろう。そんなことはおくびにも出さないが。そして、主人公に、別れ際に礼を言うのだ。その態度は間違いなく、主人公の性癖をも知っていて、そして現実として受け入れている。

特に騒ぎもせず、嫌悪もなく。
自分には信仰がある、というのが彼女の支えだ。
このセンスを驚かずにいられようか。

そんなこんなで、たぶん年月が経ってもこの感覚を時折思い出すだろう、今年の私的ベスト5に入ること間違いなしの作品でした。

追記
公式サイトのコメント
http://gaga.ne.jp/elle/comment.html
を読むと、さらに味わいが深まります。

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