「スパイダーマン ホームカミング」
3分の2くらいまでは退屈で困った。
ピーター・パーカーの独り相撲を延々見せられて。
ところが、敵役の意外な素顔がわかった瞬間から、俄然面白くなる。そういう伏線だったのか。
スパイダーマン作品の毎度の売りは、身近な人間が敵になる葛藤だろうし、本作でもその基本を守っているけれど、こういう見せ方は意表を突かれた。上手い。
そうしてみると、前半のぐだぐだ感が、実は計算されたプロセスだということになって、これはちょっと座りなおして、ちゃんと見ようかという気になる。
この敵役の立ち位置がまた絶妙。つまらない悪役にありがちな征服欲とか肥大した自我とか妬み嫉みとか、そういうものは全くなくて、生活のために悪事と知りつつやっている。正義を気取るアヴェンジャーズに目を付けられないように細心の注意を払って、やりすぎないようにしている。
こういう中身のある敵役は珍しいんじゃないか。その小物的現実感覚、己を知る戦略に好感が持てます。彼には彼の正義がある。よく見ると演じているのはハンバーガー帝国創業のおっさんだし。
そういう身近な目線に合わせて、大事件の割に死人が出ない展開になっているのもいい。
スパイダーマンが激闘の末に敵役を助けるのもいい。
事件が解決して晴れて憧れのチームに入れてもらえるというところで彼がとった行動もいい。そこに微妙な勘違いの空気を含ませたのもいい。
最後におばさんにまずいところを見つかってあわやというシーンで切ってコミカルな空気を取り戻した終わり方が最高にいい。上手い。
スタッフロールの途中で、服役した敵役が見せた反応もいい。
という具合に後半は怒涛の「いいね!」の連続で、前半と打って変わって満足度高いです。途中であきらめずに最後まで見ましょう。
キャプテン・アメリカを、大きな物語があった古い時代の象徴に仕立てて道化に見せるなど、地に足の着いた明るい未来wを感じさせる、いかにもミレニアル世代のスパイダーマンらしい作品に仕上がっておりました。
ワタクシ的な希望としては、主演の男の子はともかく、次もマイケル・キートンおやじに頑張っていただきたいです。