「美女と野獣」
なんだこのクサい演出は!と怒りだしそうになると、エマ・ワトソンのアップ。
なんだこの田舎芝居!と思っていると、エマ・ワトソンの笑顔。
勝てません。勝てる気がしません。
でもちょっとだけ言わせてください。
あの村の作り物めいたスケール感や色調は、当然、村を嫌いになるように仕向けていると思うけど、ちょっとやり過ぎではありませんか。ほっぺたにナルトの渦をクレヨンで描いたバカボンが突然現れても何の違和感もない、そういうケバい絵です。
いくら魔女の呪いで少しイカレてしまった村だからと言って、どうにも不自然です。第一そんな作為的なつくりの村に、呪いを解く美女が生まれ育っているなんて、変じゃありませんか。普通、解呪の鍵は外から来るんじゃないですか。
もうちょっと言わせてください。
いくら米国的にポリティカリーコレクトだからといって、ああいう欧州中世の城に、黒人がたくさん居て、白いドレスに白いお白粉赤い頬紅で社交ダンスしてるのは、変すぎやしませんか。いやはっきり、変です。漫画的な画質はそういうところからも滲みだしてきています。
さらにさらに言ってしまいます。
ベルは勇敢で変わり者で知識欲旺盛なのに、それでもやっぱり玉の輿の定型に嵌まらざるを得ないのは、少し残念です。リアルな世界ではガストンのような人物こそが、自然に対抗して人間の居住域を広げるに与るところ大だったと思うのですが、作中ではそれは忌むべきものとして扱われて、既得権者である王子の方を善玉に仕立てています。御伽噺だからこれでいいとはいえ。釈然としません。
まあでも、いいです。これはエマ・ワトソンに捧げられた映画なんでしょうから。わしらは彼女が演じる健気な女性像を観にいっているのですから。
ただ、そのことがこの女優さんの幅を狭めてしまわなければと、それが気掛かりです。
とりあえず、歌に情感を込めるのは上手くないみたいだから、もうやらなくていいんじゃないかな。
それと、あの衣装だから仕方がないけど、無理に胸を強調するのはそぐわないな。本人も嫌がってなかったっけ。
わしらはそんなものを期待しているわけではないです。
もろもろ見せつけておいて、最後に男に "I'm not beast" とか言わせるのが、まあ女の勝利ということかもしれませんが。
ということで、次はよろしくね。