「スプリット」
多重人格障害といえば、ビリー・ミリガンが有名だが、それを下敷きにしたと思しきものが本作。もっとも、虚構である本作には、実話のビリー・ミリガンとは異なる到達点が与えられる。そこがこの作品のクライマックスの見どころ。
あり得るのだろうか。そんなことが。作中の医師が言う通り、人間には限界というものがあるはずだ。だが、それを超越してこそのフィクションだろう。ちょっとイカレた存在が主人公の方が、作品の翳は濃く、情動は強くなる。
ナイト・シャマランは、これまでもそういう病的な(笑)ベクトルの作品を作ってきたと思うけれど、今回、その方向に一層強く、思い切りよく踏み込んだ。いったいこれからどうなってしまうのか。
お話は、解離性同一障害者と、彼が監禁した3人の普通人との駆け引きで、終始緊張が保たれる。ジェームズ・マカヴォイはこういう役にうってつけだ。レオナルド・ディカプリオが演じた方は見逃したけれど、本作で十分満足です。
それにも増して本作で光っているのが、アニヤ・テイラー=ジョイ。「大物」の呼び声が高いそうだが、さもありなん。曲者のマカヴォイに負けてない。ラストで、パトカーから降りるのを拒んだときは、ケビンと同じように"ピー"してしまうかと思ったくらい。本物の魔女が現れた。もっとすごい役ができるはず。
ラストのネタバレは厳禁だそうだけれど、まあ、そんなに驚くようなものでもない。この監督は映画づくりは上手いのだから、不必要に煽らなくても、十分面白いと思います。