「僕とカミンスキーの旅」
年の離れた二人の曲者が繰り広げる珍道中。老画家が時折放つ箴言が、世の真理を言い当てているようなそうでないような、思わせ振り具合がよい。若い方の自称伝記作家は、老画家の偏屈と我儘に振り回されるのだが、なぜか徐々に、この老人に親愛と敬意のようなものを抱き始める。ように見える。
老画家の言葉に、ひと筋の真実を見たからだろうか。
その感情は、老画家が一途に思いつめた昔の恋人と再会して、その俗物振りに打ちのめされた後、いっそう強まるようだ。
年寄に対する敬意というのは、その人が切り抜けてきた様々な体験が、言葉にしなくても滲み出てくるところに由来すると思う。
この作品の老画家は、その感じをよく出していた。
心温まるとは言わないが、味わいのある一本。