「MERU」
登山家のドキュメンタリー映画は、いつも清々しい。それは、彼らがいつも淡々と命を懸けているからだ。
その命懸けには、しかし無謀さは微塵もない。冷静に計画し、周到に準備し、怠らす技術を磨き、最高にコンディションを高めて、チャレンジする。だからこそ生き残って結果を出せる。
それでも、天運というものはあって、危険に近づく以上は命を落とす者もいる。そこに、技量の差はおそらくない。ただ運があるだけだ。
生き残った者は、なぜあのとき、自分が助かって、師が、友が、死んだのか、自責の念を背負うことになる。
この映画は、そういうことはおくびにも出さずに、しかし死者が遺した家族を引き受けて、なお、命懸けの偉業に挑み続ける男の姿がある。
鳥肌が立つほど清々しい。
しかも、映像が美しい。
俳優を使った作り物の作品にはない美しさがある。
あまり客が入っていないけれど、これも観る値打ちのある一本。