「山の郵便配達」
本年最後に見たのが、最高の映画でした。
はた目には一見単純作業のように見える仕事にも、実は繊細なディテールがあることがあって、それを実践すること、伝えていくことは大切なのだ、ということが切々と伝わってくる。
生活と家業が未分化な懐かしい時代の温もりがここにある。
もちろん、息子が言うように、郵便を運ぶだけならバスで運んだ方がよほど効率がよいかもしれないし、変えていくべきところがあるのかもしれない。ものを作ったり運んだり、金儲けしたりというだけなら、確かにそうだ。
しかし、人と人とのつながりについては、効率一辺倒では壊れてしまうものが多くある。足で歩かなければ気付かずに通り過ぎてしまうようなものごとが、この作品にはたくさん描かれている。
旅を通じて息子がそれを理解し、父の後を継いで歩き始めるのが、観ている方としては嬉しいような切ないような、複雑な気持ちになる。
名作です。