「この世界の片隅に」
ここまで感想を書けずにずっと引っ張ってきて、でも今年中には書いておかないと年が越せないと思い立ち、仕方なく書いてみる。
この映画の良さはうまく言葉にするのが難しくて、言葉にしたとたんに良さが逃げる感じがする。なので、短く。
幸せというものは、日々の暮らしのディテールに宿る。
すずさんは、それを見つける才能に恵まれた人だった。
その影響を周囲の人も受けているのがわかっていたから、
家事がうまくできなくなってからも、
「いつまでもいていいんだよ」ということが自然に言えた。
そんなすずさんにも、戦争で失ったものの大きさは少々堪えた。
「暴力っ」という台詞に、政治的な色を感じ取るのは誤りだ。
幸せを見つける達人でさえ、そう絞り出すように言うしかない
理不尽と喪失感の大きさを、見る側は感じ取る。
それが正しい見方だろう。
パンドラの地獄の蓋が開け放たれた後に、
どん底で拾った、最後のものを、懸命に磨き続けることで、
喪失感は徐々に癒されて、
元通りにはならなくても、なんとか明るく生きていける。
その過程は、エンディングと一緒に早回しのように流れて、
懸命に生きているときの時間の流れの速さを教えているようだ。
どうも上手く言えないが、
これ、素晴らしい作品ですね。
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