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December 2016

2016.12.31

「この世界の片隅に」

ここまで感想を書けずにずっと引っ張ってきて、でも今年中には書いておかないと年が越せないと思い立ち、仕方なく書いてみる。

この映画の良さはうまく言葉にするのが難しくて、言葉にしたとたんに良さが逃げる感じがする。なので、短く。


幸せというものは、日々の暮らしのディテールに宿る。
すずさんは、それを見つける才能に恵まれた人だった。

その影響を周囲の人も受けているのがわかっていたから、
家事がうまくできなくなってからも、
「いつまでもいていいんだよ」ということが自然に言えた。

そんなすずさんにも、戦争で失ったものの大きさは少々堪えた。
「暴力っ」という台詞に、政治的な色を感じ取るのは誤りだ。

幸せを見つける達人でさえ、そう絞り出すように言うしかない
理不尽と喪失感の大きさを、見る側は感じ取る。
それが正しい見方だろう。

パンドラの地獄の蓋が開け放たれた後に、
どん底で拾った、最後のものを、懸命に磨き続けることで、
喪失感は徐々に癒されて、
元通りにはならなくても、なんとか明るく生きていける。

その過程は、エンディングと一緒に早回しのように流れて、
懸命に生きているときの時間の流れの速さを教えているようだ。

どうも上手く言えないが、
これ、素晴らしい作品ですね。

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「山の郵便配達」

本年最後に見たのが、最高の映画でした。

はた目には一見単純作業のように見える仕事にも、実は繊細なディテールがあることがあって、それを実践すること、伝えていくことは大切なのだ、ということが切々と伝わってくる。

生活と家業が未分化な懐かしい時代の温もりがここにある。


もちろん、息子が言うように、郵便を運ぶだけならバスで運んだ方がよほど効率がよいかもしれないし、変えていくべきところがあるのかもしれない。ものを作ったり運んだり、金儲けしたりというだけなら、確かにそうだ。

しかし、人と人とのつながりについては、効率一辺倒では壊れてしまうものが多くある。足で歩かなければ気付かずに通り過ぎてしまうようなものごとが、この作品にはたくさん描かれている。

旅を通じて息子がそれを理解し、父の後を継いで歩き始めるのが、観ている方としては嬉しいような切ないような、複雑な気持ちになる。

名作です。

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2016.12.30

「ピートと秘密の友達」

森に棲む心優しいはぐれドラゴンと少年の交感。
少年を発見して連れ戻した人間社会との軋轢。

心無い大人たちによるドラゴンの捕獲と
少年とその友達によるドラゴンの解放。

絵に描いたような定型のお話だが、ここはディズニーの得意分野。手堅くまとまっている。

子どもの情操教育にとてもよさそうな一本。実際、客席には小さい子連れの家族が多かった。


ちょっと面白かったのは、幕間の新作の広告に、子どもが逐一反応していたこと。
ドラえもんがでてくると、「これ見たい」
美女と野獣が出てくると、「これ絶対見たい」

美女と野獣なんて、エマワトソンのインタビュー映像なんだけど、わかるのかな。他で情報仕入れているんだろうか。

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「仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー」

これは血圧上がるわー。

ど派手な色彩と構図の映像、激しいアクション、ノリのいい音楽、そして戦闘シーンの爆音がこれでもかのオンパレード。これ、ミュージカルの舞台なんかの数倍刺激が強い。知らず知らずに頭に血が上るようにできてる。

フィニッシュはなんと、Game Clear でずよ。悪役はクリアされちまってたまらんな(笑)。そこに悲哀はない。徹底的にない。悪、滅ぶべし。

貯まったマイルで1か月フリーパスを入手したので、いつもなら見ないような映画も見るわけだけど。これはなー。映画として味わうというより、いまどきの子供たちを、作り手のマーケティング視点を借りて見る、ということにどうしてもなる。

で、気が付いたのは、高齢者の不在。確か昭和のライダーには、後見人的なおっさんがついていた。例の喫茶店のマスターだ。
でも平成ライダーにはそれがない。おっさんといえば、悪の親玉と、なんか偉い人、敬して遠ざけるという感じ。
彼らが頼るのは、同じ年代か少し上のお兄さんたち。そのお兄さんも、謀略に長けていたり、ニヒルだったり。そういうところに大人を感じるのが、いまの子供たち、ということだろうか。登場人物の類型化が進んでいるということなのか。

星飛雄馬の時代とは違うのですよ。
同じなのは、精神論が全て、という点くらい。気持ちの盛り上げが鍵、それで勝てると思っている。進歩しないなワシらは。

まあ、2時間見ていて、疲れました。やっぱりおっさんにはこの刺激はちょっときついですわ。

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2016.12.28

「シング・ストリート」

http://gaga.ne.jp/singstreet/
今年見逃したのを見る。
すると、それが今年の自分的ベスト3に入ったりする。

青春だなあ。もろに青春だ。
それに、仲間や兄弟にも恵まれている。
兄ちゃんがいいんだこれが。

音楽はさっぱりわからないけど、それでも
はじめにいきなりデュラン・デュランが流れてあがる。

途中挟まれる曲もなつかしい響き。
仲間と曲作りをするシーンが楽しそうで最高。

音楽もめきめき上手く深くなっていく。
それが、主人公の成長と重なって

そして上京物語へ、というエンディング。

いいなあこれ。

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2016.12.25

「幸せなひとりぼっち」

これもなかなか良い、「老い」を描いた作品。
いや、老いそのものというより、老い方、という方があたっているか。

「ミス・シェパードをお手本に」がいかにも英国風なのに対して、こちらはいかにも北欧風。

私的には、こちら「幸せなひとりぼっち」の方が、泣かせる場面が多くて好み。

英国風は、最後まである種の打ち解けなさがあって、そこが苦くて味わい深いけど、素直にハートウォーミングな方に一票入れておこうかな。

今年はちょっと不作な年かとおもったけど、年末にきて味のある作品多数を見られてよかった。

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2016.12.24

「ミス・シェパードをお手本に」

老いを描く映画としては、悪くない出来。

べたべたとウェットにならずに、かといって非情な感じでもなく。

「介護とはつまりシモの世話のことだ」なる至言も入っている。

これが実話というのも結構驚きだ。
当事者の懐の深さや忍耐強さが想像できる。
まあ、それも生活に余裕があってのことなのだけれど。

主演のマギー・スミスは、1934年生まれというから、御年83。
お元気ですね。そしてずっと女優さんをやってきているんですよね。
素晴らしい。

私のような若造は、ハリーポッターのマクゴナガル先生とか、
マリーゴールドホテルとかあたりからしか知りませんが、
よいですね。

いつまでもお元気でいてほしいです。

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「バイオハザード:ザ・ファイナル」

シリーズ第一作は、ものすごい衝撃だった。グロい映像もさりながら、展開の非情さが。
レーザートラップのシーンの残虐さはいまの基準でも相当なものだ。
そして、脱出する列車で起きた惨劇。ゾンビ映画の面目ここにありといわんばかりの葛藤。
いま思い出しても胸熱です。

しかしその後は、どうもマンネリ感が強くて、特にクローンが出てきたあたりから、わけわからん感じになった。たしか、途中見ていないのもある。

たぶんこれは、ミラ・ジョヴォビッチの自撮り映画になったんじゃないか。自分の一番いい写真を撮って残すっていう。いや、考え過ぎですかね。

ともあれ、終わってよかった。

第一作の呪いから解放された。

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「聖杯たちの騎士」

うーん。
スノッブ。
そんだけ。

この人の作品は、ツリー・オブ・ライフもそうだったけど、
もう見なくていいかな。

次のVoyage of Timeはちょっと面白そうだけど、
これを見せられてしまったあとでは、迷う。

まあ、いろいろ難解な講釈を垂れる評論家さんにとっては
いい飯の種なんじゃないか。


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2016.12.23

「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」

緊張したー。

ミサイル発射から着弾までのわずかな時間は、映画的な演出の効果で普通に緊張する。

作戦実行派と反対派との間で、会議室や作戦室で繰り広げられるつばぜり合いは、もっと緊張する。

AI絡みでも最近注目されたトロッコ問題は当然あるとして、それにプロバガンダ戦争という視点が重ねられて、奥行きが出る。

戦争は政治の手段とはよく言ったものだ。
その意味で言えば、作戦はもちろん成功だ。けれども。

あの少女の父親は、その後どうするのかね。
そこがこのお話の本当の帰結であるはずだ。
それは、観る側に委ねられている。
作り手はよくわかっていて、微妙な中立を保つ。
 
 
現地のちんぴら武装勢力が、トラックの荷台のしょぼい武器を捨てて場所をつくり、瀕死の少女を大急ぎで病院に運んで行ったのが印象的だ。

制空権などという脅しと監視一辺倒の概念だけでは、信頼される統治はとうてい成し得ない。

アランリックマン、いい作品を遺してくれました。R.I.P.

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2016.12.16

「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」

スターウォーズのシリーズについて、感想を冷静な視点で書くのは、難しい。
なにしろエピソードⅣが1977年ですよ。40年前だ。

いま、それなりの年齢になっている人は、人生のかなりの長きにわたって、これと付き合ってきたことになる。長さだけなら「こち亀」とか「さざえさん」だって長いのだが、「スターウォーズ」の世界中での広がりようは別格だ。

と、一応持ち上げておいたうえで。

この「ローグ・ワン」は映画としては残念な出来だ。
理由は簡単。登場人物たちの背景がほとんど描かれていないので、ピンとこないのだ。

なるほど主人公については、少女時代に起きた一大事件のエピソードが挿入されてはいる。けれども、その後のことはまったくわからない。
父親をおびき出す罠に使われそうになったという短い説明が入っているが、説明であって描写になっていない。

使われた尺の短さが問題なのではない。
語り口が下手なのだ。

逃亡してきたパイロットはどうだ。
彼がなぜそんな重大な機密を託されて、それまでの人生を捨てて命を的の逃亡者になったのか、納得いくような描写があっただろうか。
確かに、機密を託した科学者の暗示的な言葉は挿入されているけれど、ここでもそれは、説明的な台詞でしかない。なんというか、下手だなあ。物語ってそうじゃないだろ。

帝国軍仕様のアンドロイドはどうか。
なぜ彼が、あれほどの最後まで頑張るのか、その感触が変だ。
まあ、それを言うとR2-D2も変なのだが、あれはレイア姫という高貴なお方の忠実なペットだからという納得感でさらりと流せる。しかし、本作のアンドロイドも含めた多くのならず者達が、なぜこれほどrebellionに忠誠を尽くすのか、その背景の描写がない。
薄っぺらく感じられてしまう。

安っぽいのはひとつの味わいだが、薄っぺらいのはいかん。


まあ、スターウォーズはスペースオペラだから、このくらいでいいのかもしれないが、もうちょっと上手く乗せてくれよ、と言いたくなる。

そんな中ではあったけれど、主演のフェリシティ・ジョーンズは、主人公ジンの空白の成長過程を、荒んだ表情や棘のある言行だけで、どうにか表現していたのは、まあ救いですかね。

ルークやその子供たちが、いわばフォースのエリートであるのに対して、ローグ・ワンの登場人物たちは特別な素質も素養も持ち合わせない戦災孤児たちだ。その彼らをして、May the force be with "US". と言わしめるところに、この作品の値打ちはあったのだろう。あったはずだったのだが・・。

主人公以外のキャラクタ達は、思わせぶりな風体ではあったけれど、影が薄かった。残念。

だいたいね。

最後に暗闇から登場するダースベイダーに、たいがいのキャラは吹っ飛ばされてます。
ちょっと出てきてライトセイバー軽く振っただけのベイダー卿が一番恰好いいっていうのは、やはりこの作品は過去作を全く超えられなかったと言えると思います。これがつまり、冷静な視点で語るのは難しい、ということ。

そのまた後のトリを務めた人は・・ここは笑うところだったっけ?
CGなのかな。


希望ガーという台詞を言わずに、それを感じさせること。その前段の絶望の深さを描くこと、その深みから希望にたどり着くまでの葛藤を描くこと、いずれもできていなかった。

たぶん、もう少し上映時間を長くとって、必要なエピソードを入れるだけで、ずっとよくなったと思うけど、回転上げて売上上げないといけない宿命なんだろうな。

よさそうな題材だっただけに残念。すごく残念。

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2016.12.10

「ブルゴーニュで会いましょう」

どうしてこういうくだらない邦題になってしまうのか。
いい映画なのに。

それはさておき、こういう作品を、柄にもなくいいなあと思うのは、一種の憧れなんだろうなと思う。

田舎の暮らしには隠れた苦労や嫌なことがたくさん、とかいう批判はなし。そんなものは都会にもたくさんある。

人口密度が高い日本では、広い土地で比較的少数の人を養えばいいというわけにはいかない。
だから、いいなあと思いつつ憧れにとどまっていた。

でもひょっとして・・人口が急速に減るそうだから、ちゃんと備えれば、こういう生活ができるようになるかもね。

ほんとかな。ほんとだといいな。

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