« 「シン・ゴジラ」 | Main | 「X-MEN:アポカリプス」 »

2016.08.02

「シン・ゴジラ」

これは確かに、本物のゴジラだ。架空の巨大生物を本物と呼ぶことができれば、だが。

テロップの使い方や、自衛隊を写す色調などに、少しドキュメンタリーのような空気感があって、それが初期のゴジラ映画を思い出させてくれる。

邦画全体に言えることだが、金食い虫の映像技術に頼り過ぎず、脚本と台詞によるドラマとして価値を持たせようとしているように見える。映像は決して安っぽくはないのだが、ハリウッド産を見慣れている目には、低予算な印象は否めない。が、それはこの映画の価値を全く落としていない。

ゴジラは、はるか遠くに見えていて普段はぼんやりした不安でしかないけれど、知らないうちにすぐ近くにやって来て突然凶暴な実相を顕わす危機イメージの象徴だ。そのことを、作り手は十分理解している。

だから、描かれているのは、ゴジラそのものではなく、コジラが象徴するもの、そしてそれに対処しようとする人間たちのドラマだ。

まさに原点回帰。

しかも、ひょっとすると、原点を超えているかもしれない。

エンタテインメントとしては、これはもうヲタクな人たちの評判を聞くのが早い。そんなところにまで趣向が凝らされているのかと驚くような伏線が満載。らしい。

ま私としては、近頃感じているそこはかとない危機の感じーそれもひとつではないーを思い出させてもらっただけで、十分満足いたしました。

続編へのつなぎも仕込まれているようだけれど、あまりうまくいかない気もする。エヴァンゲリオンを見れば、それがこの作り手の限界なのだと、わかる人はわかるのではないか。

|

« 「シン・ゴジラ」 | Main | 「X-MEN:アポカリプス」 »

映画・テレビ」カテゴリの記事