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May 2016

2016.05.28

「神様メール」

奇想天外な設定が可笑しいです。
余命ものにありがちな暗さやしんみりしたところはなく、かといって不自然に騒々しくもせず、ほどほどに収めています。
言いたいことは、まあわかりますが、感動を呼ぶという作り方にはしていないようです。男の神様が徹底的に否定されるのは時流ですかね。。

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「マイケルムーアの世界侵略のススメ」

いつもの建設的合衆国批判ですが、以前よりも多少緻密なつくりになっています。
社会の規模や資源国か否かなど、基礎的条件への言及はないので、都合のいい面だけを取り上げて編集していると言われそう。まあ作品とはそういうものなのでご愛敬。

権威主義的な男のダメさ加減を叩いていて、時流だなという感じです。

始めに少しだけ、米国の軍事費の大きさをさっと見せておいて、あとは一切触れないあたり意図は見え見えです。そういえば、それを言っている大統領候補がいましたね・・

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2016.05.27

「スノーホワイト/氷の王国」

「壮大なストーリー」という煽りとは裏腹に、クリステン・スチュワート主演の前作同様、学芸会的雰囲気を感じさせる怪作。

中心に容赦なき悪の女王として君臨なさるのがシャーリーズ・セロン様。今回はさらに妹君のエミリー・ブラント様も登場して、西の金角銀角と言った趣。

対するは「あーい」という生返事が魅力の西の孫悟空、クリス・ヘムズワース。お猿さんです。

まあ、悪の金銀を見に行くのが私の目的なので、それは達成されました。悪を極めた女王の最後の言葉は、おやと思わせるような繰り言でしかなくて、人間歳はとりたくないもんだなと思います。

いや、人間じゃないかあれは。

ともあれ、そんな感じ。

前作のtrailer
http://www.imdb.com/title/tt1735898/
を見ると、前の方がかなりパワーがあった。

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2016.05.22

「海よりもまだ深く」

樹木希林、阿部寛、小林聡美が絡んで、少し以前の日本的家庭の日常を、濃厚に、たっぷり時間と手間暇を掛けて描いている。小道具からちょっとした台詞まわしから、なにからなにまで、あの時代、あの雰囲気を、ぴたりと描き出している。これが物語の下地。これ、こんなに贅沢なのに下地なんですよ。

ここだけでも味があってじんわりくるのだが、これと波長が合うかどうかで評価が分かれてしまいそう。そういう意味で、対象を選ぶ作品。外国人には、おそらく絶対にわからない。ひょっとすると、平成以降の日本人にもわからないかもしれない。どうなんだろうか。


さて、そんな下地の上に、今度は、離婚で離ればなれになった家族をもってくる。下地とは異なる苦みのある実を載せる。

離婚、と一言で片づけて、あとは観る側の想像にまかせるような手抜きは、この監督は絶対にしない。どんな風にこの実が苦いのかを、これまたものすごく丁寧に描く。説明的な台詞に逃げたりもしない。ちょっとした場面を連ねていって、腑に落ちるまで描く。

なりたいものになれなかった、という作品のコンセプトを額面通り受け取れば、なれないまでも適当なところに収まった男女を描いてもよかったはずだが、そうせずに破綻までいった筋書にしている。ひりひりするような痛みが隠れている。

この下地と実を、ご近所や仕事先という餡で包んで、これまたものすごく丁寧に包んで、そうして玄妙な味わいの作品が完成。しみじみした味わいがにじみ出ている。


途中、ちょっと面白い処理があった。
樹木希林演じる祖母が、決めセリフのようなものを言うシーン。

「幸せっていうのはねえ・・何かを捨てないと手に入らないものなのよ」

これを言わせて、しばらく余韻を持たせたあと、
「今、あたしいいこと言ったでしょ。ねえ幸せって・・メモしておきなさいよいつもそうしてるでしょ」

これは笑った。そういう決め台詞依存の姿勢を、笑いをとるネタに使ってやんわり遠ざけておいてから、この映画の真の価値創造プロセスへ着実に進んでいく。

玄人受けするというか、すごい。
こんな手法を取り入れる監督も監督だが、ぬけぬけと演じて見せる樹木希林もどうなんだ。この女優さんがいるおかげで、邦画の表現の幅はずいぶん広がっているのじゃないか。


海街ダイアリーに比べると、一般受けはしないかもしれないが、私にはとてもよい按配の味付けに仕上がった傑作に思えました。


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2016.05.21

「ガルム・ウォーズ」

世界の半分は怒っているぞ。
上映館が少なすぎて。

でもまあ、ヲタク要素のエッセンスだけを組み合わせて映画に仕立てたようなものだから、致し方ないか。

男は馬鹿で漢らしいし。
女は端正で濃密にエロいし。
年寄は賢しらで陰謀家だし。
メカは相変わらずパンクだし。
犬はいつもの犬だし。

謎の超人はおどろおどろしい正体を現すし。
それで最後は巨人軍団との対決はじまるで「つづく」だし。

まったく世界の半分は怒っているぞ。

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2016.05.15

「亜人」

漫画が原作の3部作のうちの2。

不死身の超人が、その能力ゆえに国家に利用され、人々から疎まれ、同類の中でも武闘派、穏健派、無関心派などに分裂し、その中で高校生が成長する。

手を変え品を替え繰り返されるストーリーの定番。

とはいえ、なかなかよくできている。こういうのはディテールが大切。そこがこの作品は悪くない。

原作は読んでいないし、1も見ていないので、いろいろ疑問はあるのだけれど、この黒い影のような存在の設定はお面白い。まあ、スタンドでしょ、と言われてしまうと、スタンドに含まれてしまうのだけど。やっぱり荒木飛呂彦は偉大。

亜人と現代兵器の戦いかと思うと、亜人の方にも軍隊歴のある者がいたりしてやっかい。かと思うと、国家政府の側にも隠れた亜人がいたり。戦略要素もあり、合従連衡もありで結構楽しめる。

ただちょっと、ヤンキー気質をちりばめているのが、自分的にはどうなのかと思う。底辺のガス抜き妄想のような作り方に寄り過ぎると、勿体ないと思うのだ。亜人というアイデアや、プロットのあれこれが面白いだけに、狭いファンだけに偏らないようにしてほしい気もする。そのクラスが「狭い」範囲ではなくて、広がりつつあるのだとすると困惑するが、違うとも言い切れない。作り手はそういう世の中の変化をうまく掴んでいるのかもしれない。

いろいろ考えてしまうネタがちりばめられていて、それで奥行が出ている。


にしても、またも厚労省か。時代の最先端じゃないか。

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2016.05.14

「マクベス」

いや、まあ、映像は雰囲気出てました。
霧に包まれた荒涼とした大地の感じがよいです。

マクベスと夫人の生々しい感情が出ていたかというと、ちょっと綺麗すぎる印象です。狂い死にするはずですが、正気のままのように見えて、どうなんでしょ。特に夫人の方が。

闘いのシーンは霧に隠された生々しさがあって映像的に頑張ってます。
が、「マクベス」のテーマはそれではないわけで・・
宣伝文句も、何かはずしているものばかりな気がして。

ということで、評価はちょっと難しい気がしますですはい。
現代の映画のコンテクストと、シェイクスピアの時代の台詞まわしを中心とした環境とで、見る側が想像力を働かせるやり方が違うのかもしれません。そういう意味では役者泣かせかも。

雰囲気はとてもよく出来ているので、それを見に行くのがよさそうです。

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2016.05.08

「ズートピア」

ディズニーの価値観にはブレがない。
ということを再認識させる映画。

現実が多少違う方向に行っても、いずれここへ還ってくると確信しているかのようだ。

もちろん、狐が撃たれて野性を取り戻して兎を食ってしまうのが、童話世界の原型に近いだろうし、現実の世界の真実なのかもしれないけれど、そこをちょっとした機転やトリックで切り抜けて、正義は勝つ風にしているのが、ディズニーの真骨頂だろう。

現実が辛かったり思い通りにいかなくても、映画でひと時の夢を見て元気を取り戻す。そういう時間と空間を作り出すのがエンタテインメントの本分だと、骨の髄までわかっている。

面白いのは、昔話の不条理や野性礼賛を、文字通り「昔の話」として、作品の中に包み込んでいるところだ。これほど直接的にそのテーマに触れてなお、無理なく収めているのは、お見事というほかない。

何気ない作品だが、ただでさえ質が高いディズニーアニメの中でも、そうとう上の方に入ると思う。

夢売り商売のプロの手になる傑作がまた1本誕生した。

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「ヘイル、シーザー」

虚業と言われる宿命が映画にはあって、それでも大切なものなんだ、という熱い主張が籠ってる小品。
豪華キャストが心意気で出演したのかなと思わせるような、小振りな作風。

ま、そんなところ。悪くないです。

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2016.05.01

「追憶の森」

一定の年齢になれば誰でも、身近な人の死に向き合うことになる。
そのときになってはじめて、自分がいかに自己中心的な人間だったかに気付くことがある。
そういう点で、誰にでも共感できる内容を、この作品は、コンパクトに、多少ドラマチックにまとめている。

互いに率直な話ができなくて、優しさを見せるときも迂遠な方法をとる。
相手もそれに気づいていながら、気付かないフリをする。
これもよくある話で、共感できる。


この作品の巧みなところは、その迂遠な方法を、亡くなった妻から夫へのメッセージにも使っていることだ。
まさかあの、日本人のくたびれた中年男が、亡き妻の、素直でないが愛情のこもったメッセージの依代だったとは。

泣ける。

この巧みさのお陰で、ありがちなテーマだが、良い印象を残す作品に仕上がっている。

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