「ルーム」
拉致監禁がネタになっているけれど、このお話は、その監禁から、知恵を使って脱出した後が、本筋になる。
そういう目にあった犯罪の被害者を、世間はどう見るか。また、当事者たちは、その傷からどう恢復していくか、という点が見どころ。
はじめは、外の世界を初めて見る5歳の子供が、適応に苦労する。周囲の大人の繊細で辛抱強い対応で、徐々に普通の子供として軌道に乗っていく。
しかし、犯罪の結果生まれてきた子に対する世間、とりわけマスコミの底意地の悪さが、子供自身よりむしろ子供を護ろうとする周囲の大人たちを苦しめる。
それを今度は、めきめきと回復した子供の無邪気さが救うことになる。
ばあばが言った、「人は助け合うもの」というせりふが、思い返してぴったり重なる。
負うた子に教えられとはよく言ったものだ。
祖母とその連れが、たいへんよくできた人間で、お話の節々に、大切な気付きがある。それが、お話の流れに自然に埋め込まれていて、見終わった後、いい映画を見せてもらったな、という印象が残る。
良作。
大資本や有名人ではない作り手が生み出した、こういう作品が、きちんと世界で評価されて、大勢の人の目に触れるのは嬉しい。