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2015.10.11

「パパが遺した物語」

女の心の内は難しい。この主人公のように、気の毒な過去を抱えていればなおさらだ。この作品は、その難しいところを、過去と現在のシーンを重ねていくことで、極めて自然に納得させる。主人公の心の襞とその由来が、違和感なく頭に入ってくる。監督、上手い。

気の毒な過去ではあるけれど、この主人公の少女にとって、父親の溢れるような愛情は、大きな遺産だった。その大きさや優しさを、ラッセル・クロウが余さず演じている。これも素晴らしい。

無償の愛を受ける側の少女を演じている子役がまたすごい。カイリー・ロジャースというらしい。TVでは既に十分な実績があるそうだから、素人ではないとはいえ、なんて上手いんだ。まあ、子供だからと、見る方の視線も多少甘くなりがちだけれど。

そして、アマンダ・サイフリッド。大きい目って得です。この人の場合、大きすぎるのがむしろ欠点に見えるけれど、それをうまく使い分けている。清純さや、気の抜けた表情が必要なときは、白目を少なくして普通の顔をつくり、妖しさを出すときは、ぎょろめ全開。うまいわー。自分の特徴を最大限いかしてるわー。

お話の方は、悲しい過去をちりばめながらも、ハートウォーミングに、父親と娘の絆を描いている。普通なら、この少女も、大きくなるにつれて親離れしていって、父親たちは寂しい思いをするのだろうけれど、作品では、子供が小さなうちに父親が亡くなり、一番いいときの思い出が、少女の中で固定化される。その意味で、世の父親たちにとってはファンタジーだろう。母親の死が正面切って出てこないのも、ファンタジー色を強めている。

まあ、屁理屈は抜きにして、割と心温まる類のお話ではありました。

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