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October 2015

2015.10.31

「ギャラクシー街道」

三谷幸喜というと、数多い登場人物のそれぞれのエピソードを、一見無関係に進めながらも、終盤にかけて急速にまとめ上げて関連付け、全てに意味があったという世界を形作るのに長けている印象がある。

今回はしかし、お馴染みの手法を採り乍ら、少しはずしてしまった感がある。登場人物の大半が宇宙人ということで、見る側の共感を得にくいところがあっただろうか。

個々のSF的小道具は笑えるものが多くて、そこは楽しい。ウルトラマンをもじったソックスマンでは、隊長とか隊員は、なんだか見たことがあるようなキャストにしているのも笑えた。

けれども、お話があまり収束しない。各個がばらばらなままで最後まで行ってしまった。

次に期待したいです。

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2015.10.25

「ステーキレボリューション」

こういうお勉強ものが結構好きで。

肉が美味そうなのは言うまでもないけど、それ以外にも、精肉店のオヤジ達とか、育牛をアツく語る農場主とか、いろいろな人たちが登場して、とっても楽しい。

そういう人たちが、それぞれの立場で、何か肉を旨くするのか、とか、どういう方法が「正しい」ことなのか、とかに熱弁を奮う。

映画の作り手の側には、穀物飼料を使うことへの批判があるようで、肉の柔らかさや味では極めて高い評価を和牛に与えながらも、足が短く細くて、まるでそれが不要なみたいだと言わせている。日本人に言わせれば、「足なんて飾りなんです」と言いたいところだろうけれど、肉食の長い彼らにとっては、それは受け入れられないらしい。

生育の早いアンガス牛 → サシの多い和牛 → 自然に育ったロングホーン → 品種より育つ環境重視
という道筋を辿って、最後は結局、農場で放し飼いにしながら、草を自然に食べて、じっくり年を取った牛が最高だという結論に至る。穏やかな性格の牛を選んで、ストレスの少ない生活を送らせることが大切で、牛の品種は関係ないというスペインの農場に、1位の栄誉を与えている。

ちょっと意外だったのは、欧州の高級レストランの人が、ステーキはハレの日の食事で、普段食べるものではないということを言っていたこと。15歳くらいの、じっくり年を取った牛には、その間の飼料やらなにやら経費が掛かっているから、そういう考え方に至るのは当然といえば当然か。

米国のレストラン主は、30か月以上なんてとても受け入れられないという考えで、それはそれでまた別の食事スタイルになるのだろう。

牛のスペックから始まって、産業全体の哲学のようなものまで考察していて、結構面白い作品でした。

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2015.10.24

「メイズ・ランナー2」

1は迷路の中を全力で走るという面白さでなんとかなっていた。

本作は、それは受け継がず、迷路は一応なくなったが、その変わり、謎が深まり、展開が早く、その眩暈がするような感じが迷路だと言って言えなくもない。少し無理はあるけれど。

まあ、アメリカ映画におけるゾンビはもはや水戸黄門における悪役の手下の雑魚たちと同じで必要欠くべからざるやられ役だから、許すとして、次はいったいどうなるのか、さっぱりわからない。

主人公の失われた記憶が取り戻されたとき、どんな驚愕の展開と結末が待っているのか、それだけを楽しみにしていくしかない。

登場人物はかなり多いものの、しっかり記憶に入ってくる。このあたりは見せ方がうまいのだろうか。

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2015.10.18

「ジョン・ウィック」

なんということはない、殺し屋活劇。キアヌ・リーブスはかっこいい。その点は評価できる。
ストーリーはあってないようなもの。まあ水戸黄門だってそんなもんだしな。

やや残念なのは、演出。
キアヌがせっかくかっこいい立ち回りを見せているのに、背後で動くやられキャラの動き方がいまひとつなので、所謂ヒーロー効果が見え見えにあなってしまっている。もうちょっとそこを工夫すると、ぐっとよくなりそう。

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2015.10.11

「パパが遺した物語」

女の心の内は難しい。この主人公のように、気の毒な過去を抱えていればなおさらだ。この作品は、その難しいところを、過去と現在のシーンを重ねていくことで、極めて自然に納得させる。主人公の心の襞とその由来が、違和感なく頭に入ってくる。監督、上手い。

気の毒な過去ではあるけれど、この主人公の少女にとって、父親の溢れるような愛情は、大きな遺産だった。その大きさや優しさを、ラッセル・クロウが余さず演じている。これも素晴らしい。

無償の愛を受ける側の少女を演じている子役がまたすごい。カイリー・ロジャースというらしい。TVでは既に十分な実績があるそうだから、素人ではないとはいえ、なんて上手いんだ。まあ、子供だからと、見る方の視線も多少甘くなりがちだけれど。

そして、アマンダ・サイフリッド。大きい目って得です。この人の場合、大きすぎるのがむしろ欠点に見えるけれど、それをうまく使い分けている。清純さや、気の抜けた表情が必要なときは、白目を少なくして普通の顔をつくり、妖しさを出すときは、ぎょろめ全開。うまいわー。自分の特徴を最大限いかしてるわー。

お話の方は、悲しい過去をちりばめながらも、ハートウォーミングに、父親と娘の絆を描いている。普通なら、この少女も、大きくなるにつれて親離れしていって、父親たちは寂しい思いをするのだろうけれど、作品では、子供が小さなうちに父親が亡くなり、一番いいときの思い出が、少女の中で固定化される。その意味で、世の父親たちにとってはファンタジーだろう。母親の死が正面切って出てこないのも、ファンタジー色を強めている。

まあ、屁理屈は抜きにして、割と心温まる類のお話ではありました。

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「ファンタスティック・フォー」

少々残念な出来。

確か、前の2作はスーがジェシカ・アルバだったはず。その時は見なかったので、比較はできないが、もし女性メンバーの配役がジェシカ・アルバだったら、そっち方向でそれなりに見るべきところはあったかもしれないのにと思う。あるいは、もっと別の、華のある女優さんだったら。。

今回の彼女は、ちょっとその点で物足りなかった。まあ、科学者という設定だから、むしろ今回の方が自然なキャスティングで、仕方がないのだけど。

今回はむしろ、Mr.ファンタスティックのリーダーとしての苦悩と友情を中心に据えていると思うけど、やはりウケはあなりよくないようだ。

公式サイトを開くと、最初に動画のダウンロードが始まるのだが、これが遅くて遅くて、途中で閉じること3回。なんとかならないのだろうか。Youtubeの速さと比べて大きく見劣りする。

この4人の特殊能力の、変なアンバランスとかは、初期の超能力ファンタジーのレトロ感があって、そこは結構魅力だったりはする。

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2015.10.04

「NORINTEN〜稲塚権次郎物語〜」

NORINTENって何だ? という興味で見に行った・・わけではありません。マンションの管理人さんが、原作小説の著者の知り合いとかで、それで教わって見に行ってみた。こだわりの日本人が、人知れず世界に貢献したことを記録する映画。

農林10号。という小麦の品種のお話。アジアの食糧危機が叫ばれた頃、農業技術の発展によって穀物を大増産できるようになり、危機は回避された、というのはよく聞くお話し。これを「緑の革命」と呼ぶそうだが、このときの推進力になった短稈品種(背丈の短い小麦や稲)の中の、メキシコの小麦の源流が、日本で開発された「農林10号」だったらしい。そうなのか!すごいやん日本人!

この「緑の革命」の解説を読むと、いろいろ勉強になる。

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2015.10.03

「岸辺の旅」

あの世とこの世の境目のやるせないお話。良作。

背筋が少しひんやりする怪談を、穏やかで心温まる人情噺に仕立てて、ひんやりとほっこりが同居する不思議な話しになっている。それが心地よい刺激に感じられる。

いくつかの短いエピソードをつなぐ形になっている。

この不思議な現象の仕組みを見せて、観客をこの世界に馴染ませるエピソード。それから、あの世に戻っていく前兆現象を見せておき、後々の納得感のお膳立てをするエピソード。

これらは、作品世界を成り立たせるための説明のパートだが、単に説明に使うだけではなく、死という虚無の恐ろしさと、日常の朴訥な情感とを同居させて、作品全体の空気感を作り出し、観客を次の展開へと送り出す。なかなか効果的な前置き。

ピアノを使った、この世の心残りを解消して消えていくエピソード。これはもう定型中の定型で鼻白むほどだが、その舞台設定がいい。地方のさびれた旅館の、あまり使われなくなって物置になっている、宴会用の狭い広間。日が差し込む明るい2階。幽霊の類とは一番縁のなさそうな、商売に精出す旅館の主人の奥さん。
そういう、しつらえの中で、この定型が語られる。

ごく普通の日常の中に、あの世はひょっこり同居しているのですよ、と言いたいかのようだ。

そして、あの世へ旅立つこともできず、生前の縁者を連れまわす、往生際の悪いケースのエピソード。主人公夫婦が陥り得たひとつの姿を描いて、それを、自らの手で解消させている。

最後は、別れ。からりと晴れた陽光がまぶしい浜辺で、涙が一筋だけ流れる。そんな風な夫婦のお別れ。

なかなかいいじゃないですか。

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この3人のうち、生きているのは1人だけ。
それだけで、この作品の不思議な空気がわかるというものだ。

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