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September 2015

2015.09.26

「ザ・ヴァンパイア」

やっぱり吸血鬼映画は白黒に限る。

そして、この作品は、その特徴を十分生かしている。

女ヴァンパイアは真っ黒なチャドルを纏って夜の闇に同化する。

台詞は少なく、役者の表情が豊か。

ストーリーは、吸血鬼ではなく、人間世界の影を描く。

この美しいヴァンパイアに、ボーイミーツガールを絡めて、

二人の出会いのテイストが、意表を突いて面白い。

結末は救いがたい。人と吸血鬼の無言の共犯関係。

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2015.09.22

「ショーシャンクの空に」

いまさら言うまでもない名作。TOHO「新・午前十時の映画祭」で。原作はスティーヴン・キング。

同じ監督。同じ刑務所内という設定の「グリーン・マイル」が、涙なしには見られない悲劇だったのに対して、こちらは粘り強さと希望の力をじっくり見せる。刑務所内の人間たちも、極悪人はわずかで、総じて普通の人が多い。

主人公に学問と実務能力があったのが救いだった。「グリーンマイル」の主人公も、常人にはない力が備わっていたけれど、そういう理解不能なものは忌み嫌われるものだ。実務能力なら、普通の人間にも管理できて、便利に使える。ように見える。

見た後味がいい作品。

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2015.09.21

「ピエロがお前を嘲笑う」

クラッキングは、コンピュータの脆弱性を突くものだと思われているし、実際、表面的にはその通りなのだけど、実は人間の方がセキュリティホールになってしまうことも少なくないらしい。

この映画は、その基本をちゃんと踏まえていて、机の前でキーボードを叩きさえすれば何でもクラックできるかのような幻想を排している。

主人公たちは、ごみの山をあさり、臭く危険な下水道で体に傷を負い、看守を情でほだして騙まくらかして、目的を達する。そういう泥臭さを、コンピュータの世界と並行して描いている。

その点がとても評価できる。

一方で、マシン語ができれば天才、みたいな見方には難癖を付けたくなる。それが本当なら、6809で生まれて初めてゲームを作ったり、Z80のコードをICEでごりごり書いてデバッグしていた私は天才のはずだ。

いや、ひょっとして天才なのか>自分?(笑)

まあ、時代を経るにつれてコードの層が積みあがってきて、各時代ごとに中核になっているレイヤがあるというだけのことなんだろう。

いま気になるのは、スマホが世界を統べる以前、ガラケーが日本を席巻していた時代に、日本の大手メーカーが使い捨てにしてきたDSPプログラマーたちのことだ。いまごろ世を恨んで何か企んでいないか、そちらの心配もないとは言えない。

セキュリティの世界の風景も、状況はどんどん変わっているようで。最近はこんな感じでもあるらしい。「ビッグデータツールチェインのセキュリティはビッグリスク、あるいは、誰もHadoopをスクラッチからビルドする方法を知らない件について

映画ほどでなくても、少し深刻な事案が具体化して、揺り戻していくことになるのだろう。

というようなことをつらつら考えるには、いい題材ではありました。

主人公の彼が、頼りないオタクから一人前の男になっていくプロセスという見方は、ここでは採らないことにしておこう。それではまるで、不敵な犯罪者こそ一人前みたいな誤解を生みそうだし。

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2015.09.20

「わたしに会うまでの1600キロ」

「奇跡の2000マイル」を見たばかりで、似たような作品かと思ったが、かなり違う。

「わたし~」の方は、一人トレッキングをしながらも、むしろそれ以前の、亡くなった母との生活の方に主眼が置かれていて、こちらの方が味わい深い。

親よりも総じてよい暮らしができている世代、そして、親がそれを実現するためにいろいろな苦労を受け入れるのを見て育った世代にとって、この映画は随所に共感できるところがある。

それでふと思ったのだが、今よりも将来は暮らし向きが悪くなる不安を抱えて育った世代は、この映画をどう見るのだろうか。作品そのものよりも、そんな点が気になった。

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2015.09.19

「キングスマン」

これは傑作エンタテインメント。

英国風のキザな感じも、コリン・ファースが演じると嫌味が消えて、俄然恰好よく見える。加えてアクションもキレッキレ。コリン・ファース、どこで練習したんだと思うけど、これはカメラワークの巧みさも半分あるんだろうな。

アクションのキレといえば、悪役の彼女が凄い。スタントさんなのかどうかわからないけれど、映画というより、ほとんどサーカス。なんですかこの凶悪過ぎる武器と、それを縦横に振り回すアクロバティックな体捌きは。この映画の魅力の半分くらいは、彼女が作り出してると言い切って構わないでしょう。

ほかにも、ちんまいけれどウィットの効いている武器類とか、闘いを宣言する気の利いた台詞とか、われわれ外国人がイメージする少し古風な大英帝国庶民風味満載。車といえば例のロンドンタクシーだし。

そういうわけで、なにかこれまでにないテイストの娯楽映画を楽しませてもらいました。

こんな面白い映画が、なぜか小さいスクリーンなんだよね。
どうみても興行側の選択眼おかしい。

毎回満席でなかなか席がとれません。

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「進撃の巨人 後編」

予算が少ないなりに、結構がんばってる。

前編同様、巨人の見せ方がうまい。

役者の大根ぶりは相変わらずなんだけど、
一生懸命な感じが前に出てきた気がする。
それが、作中の人物像とうまく重なる。
計算してやっているとしたら、なかなかのものだ。
見る側が、大根ぶりに慣れてきたせいもあるけど。

お話しの落としどころは、まあこんなものなんだろう。

しまいには全員巨人化できるんじゃないか疑惑が
ふつふつと沸いてきて、
ミカサも巨人化したら・・オホッ?
という想像を密かに封印したり。

まあ、頑張ったで賞をあげたい。

原作の展開はどうなっているのか気になるけど
30巻は少々長い。。
どこかにあらすじの要約が落ちてないかしらん。
アニメ版というのもあるみたいだから、
それを見ればいいのかな。


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2015.09.12

「天空の蜂」

久方ぶりの東野圭吾作品。予想通りのテイスト。
たぶん、小説の方はそれなりの仕上がりなのだろう。

この作家が取り上げる題材は、ルポルタージュのような方法が
合うような気がいつもしている。
映画にしてしまうと、どうも薄っぺらい感じがぬぐえない。

たぶん、文章なら緻密に描くだろう、ものごとの背景や心理描写が、
映画という形式の中に詰め込むには多すぎるのだ。
それとも、映画づくりの方にまだ工夫の余地があるのだろうか。

とまあ、批判的なことを先に書いたけれど、
連続テレビ小説のように、トラブルが持ち上がっては解決する波状攻撃は
かなり緊張感があってよい出来だ。

自衛隊に対する世間の見方が、3.11前後で大きく異なることや、
原発の安全神話が、逆に安全対策を阻害していることなども、
きちんと捉えて、話の背骨に据えている。

エンタメとして楽しむ分には、申し分ないのではないでしょうか。

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2015.09.06

「ギヴァー」

記憶と感情を操作された似非ユートピアが舞台。

その小さな世界を維持する、少数の支配者。

歴史と記憶を受け継いで伝えるために選ばれた青年。

と、その脱出。小さな世界の終わり。

まあ、ありがちな設定と展開。

理論とか科学とかが、ひょっとすると、
感情にかなり影響されている可能性に気づく。
そんな感じの作品。

ちなみに、数学は感情とは無縁だと思うけれど。

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2015.09.05

「奇跡の2000マイル」

砂漠を2000マイル歩き通すということ自体、想像を絶するタフなことだ。
整備された巡礼路を歩くのとはわけが違うだろう。

しかしそれ以上に、旅の実現を目指して準備する粘り強さの方も印象に残る。
何がこの主人公をそうさせているか。

はじめのうちはわからなかったのだが、砂漠の旅の終わりころに立ち寄った農場主の家で、一宿一飯を恵んでもらうときに、その理由が、ほんの短い台詞とともに明らかになる。

そこがこの映画では一番堪えるところだ。
それまでは、冒険好きの気まぐれ程度かと思っていたが、ここではっとさせられる。

砂漠の風景も、終着地の海辺も美しい、それなりの作品ではありました。
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