「ターミネーター ジェネシス」
本来は、相互確証破壊という国際政治の狂気を下敷きにして、ものすごく暗い、未来のない話だったはずだが、本作にはそういう雰囲気はない。世紀末も遠くなったことだし、アメリカを真に脅かしていた旧ソ連は崩壊したし、中国は金儲けが好きだから、金のかかり過ぎる戦争などするわけがないし、という安堵感が、影響しているのだろうか。
なにより、サラ・コナー役のエミリア・クラークが、もう「エミリアたん」と呼ぶほかない愛くるしさ。なんといっても5頭身。おっとりした身のこなし。これがもう画面の緊張感を緩めまくっている。おまけにその5頭身で笑いもとってくれる。何の映画を見ているのかわからなくなりそうです。
これがたとえばモデル体型できびきび動く釣り目のクールビューティーだったりしたら、登場したとたんに「お前敵だな!」と叫びざまに銃撃戦が始まるところなんだが・・それはまあ言い過ぎとしても。
やっぱり、リンダ・ハミルトンがよかったなあ。
殺伐さを求める向きにはとうていお薦めできないが、アクション主体でぬるい人間ドラマを見たいなら、そこそこの出来ばえとはいえる。
デジタルネイティブ世代が、子ども時代を終え、いよいよ社会にでてくるようになって、この映画の根幹を成すコンピュータネットワークの存在も、馴染み深いものになった。人工知能はまさに立ち上がり始めている。それを背景に、作品も変わっていかざるを得ないのだろう。陳腐な方向にいかなければいいのだが。