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2015.04.25

「リトル・ダンサー」

子どもの才能を伸ばしてやるよう手を尽くすことは、親の誇るべき義務、という考え方が、高い評価を受ける欧米ならではの、泣かせるお話。

はじめは、バレエなど女のすることという頑なな考えだった炭鉱労働者の父だが、弟が無心に踊る姿に、何かを感じたのか、仲間たちとの結束を破ってまで、学費稼ぎのために、スト破りに加担する。

その日、昨日まではスト破りを乗せたバスに卵を投げつける側だった父親が、今日はそのバスに乗って、仲間たちの怒号を浴びる。仕事場に着いた父親が、あの頑固な父親が、男泣きに泣く場面が胸に迫る。

それでも、自分の意地やプライド、主義主張をまげてでも、弟の才能の芽を摘みたくないのだ。
炭鉱町の仲間たちも、その思いに打たれて、オーディションを受けに行くための旅費をかき集める。

町のバレエ教室の先生も、密かに推薦状を書き送って、主人公を援ける。彼女はおそらく、由緒あるあのバレエ学校の、相当な地位に居た人なのだろう。それがなぜ、炭鉱町でしがないバレエ教師などしているのか。鍵は、彼女が主人公に語った白鳥の湖の物語にありそうだ。踊り手の恋の悲劇的な顛末が、ひょっとすると、自分の若い頃の取り返しのつかない失敗に、重なって見えるのだろうか。

そういう想像の余地も随所にあって、いい具合に隠し味が効いている。

このお話は、主人公が見事に才能を開花させるハッピーエンドで終わっているが、もし彼が挫折していたら。父親や兄、炭鉱町の仲間、ダンス教師、大勢の期待を裏切る結果になってしまっていたら。

それはそれで、きっといい物語になるだろう。

そう思わせるに十分な、家族と仲間と導き手の描き方でした。
名作の名に恥じない一本。

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