「シェフ ~三ツ星フードトラック始めました~」
美味しそうで楽しそう。生きてる楽しみってそういうことだよね! という満足感で満たされるロードムービー。陽気なリズムと涎がでそうな料理の数々が、幸せな匂いを運んでくる。やっぱり料理の映画っていいわ。以下ネタバレ。
この太っちょの主役さんが、映画の陽気な雰囲気に大きく効いている。太ってるって本当はいいことなのじゃないか。
彼を取り巻く人々も、善人が大勢。一の子分の副料理長、美人フロア長、別れた元妻、その元夫(複雑)、誰もかれもがいい人で、世の中は思っているほど悪くないという気分に浸れる。
元妻との間にもうけた男の子が、屋台の行く先々でツイッターをフル活用して、集客に大車輪の活躍。父親が元の職場を離れる原因になった大喧嘩の知名度をフル活用して、みごとな炎上商法を展開。本人にどれくらい集客の意識があったのかはわからないが、いかにも今風な要素を、いまどきの子ども像を通して、自然な流れでお話に盛り込んでいる。うまい。
そもそも、一流レストランの料理長が、失業して移動屋台などを始めることになった切っ掛けは、出された料理を新味がないと酷評するブロガーと大喧嘩したことだが、その口論の最中にも、定番メニューを出すように強要するオーナーへの批判を一切しなかったのが印象に残る。定番商品が、安定した経営にとってどれだけ大切か、シェフもよくわかっていたのだ。
それでも新しいことをやりたい、自分の得意な料理づくりで、という気持ちが、素直に感じられて、そこがこの映画の一番の見どころだろう。引き換えに、楽しい旅が終われば、大都会での厳しい暮らしが待っていることを匂わせるのも忘れない。陽気だけれどお馬鹿には陥っていなくて好感が持てる。
最後は伏線を回収しつつハッピーエンドで締めて、落ち着き具合もいい。
万人向けによくできた、割といい作品。
これは南部に立ち寄って、ローストビーフを仕入れて試食するところなんだけど、もー見ているだけで唾がでてきます。