「イントゥ・ザ・ウッズ」
原作はブロードウェイミュージカルの由。広く知られた子ども向けのおとぎ話の、ハッピーエンドのその後を描いて、大人に向けた新しい物語の境地を示す。
定番のドル箱商品を打ち壊して、新しいスタンダードを作る試み。真のイノベーション。
まさかストーリーテリングの世界でこんなことができるとは、驚きました。
はじめのうちは、少し慌ただしいテンポでチャキチャキ進む。なにしろ4つのおとぎ話を噛み合わせているので、忙しい。巧妙な組み合わせが、それぞれのお話をつなぎとめて、中心に向けて手繰り寄せていく。
古い定番たる善人の物語はここには無く、それぞれの登場人物が、頼りなかったり浅はかであったり、多少狡猾かと思えば、自己中でもあったりと、後半に向けて様々な綻びの種が撒かれていく。
とはいえ、それらを覆い隠す定番ストーリーの安定力で、お話は一応のハッピーエンドを迎える。その瞬間に、綻びの種が芽吹き、善人の仮面を被った人々を恐怖と混乱に陥れるのだ。あーこれは面白い。
後半は、因果応報そのままの展開。手に入れたハッピーエンドのコインの裏が、表にあらわれて諍いを招く。その困惑の中で、登場人物たちは、あることを悟っていくわけだ。
結末は、幸せでもなく、かといって底知れぬ不安や悲劇でもなく。あるバランスポイントに落ち着いて、案外座りがいい。この匙加減が、次の時代のディズニー作品のスタンダードになるのだろう。
最後の語りが、この作品の位置づけをよく物語っている。言葉が持つ力を誰よりもよく知るディズニーにして、はじめて可能なリアリティを伴って、こちらの心に沁み通ってくる。
まことに優れた締めくくりになった。