「くちびるに歌を」
郷愁を誘う温かいお話。設定もストーリーも見慣れたものだけれど、だからこそ、その仕上がりの良さを素直に感じることができる。アイドル映画のような未熟な粗さもなく、観客に媚びるようなべたつき感もなく、ちょうどよい爽やかさ。今年はほんとうに、良作が多い。
新垣結衣の演技は固いけれど、それがこの配役にぴったりはまっている。あれが地でなく演技だとしたらおそろしいが、そうではなさそうでなんだかほっとする。中学生たちと一緒にポスターに移っている先生のイメージが清々しい。
もうひとり、桑原くん役のこの子がたいへんよかった。役柄が同情を集めやすいことを差し引いても、うまい。
お話の流れから言って、ひょっとすると本当の主役はこの子なのではと錯覚するくらい。