「ロスト・フロア」
「永遠の子どもたち」と同じ主演女優、同じくスペイン製の、子供が巻き込まれるサスペンス、ということで、二匹目のドジョウを期待して見に行ってみた。
とはいえ、監督はじめ作り手が違えば、当然違うテイストになるわけで。本作も悪くはないが、案に相違して比較的あっさりした出来。
主人公夫婦の夫の方が、敏腕弁護士という役柄から想像がつくとおりの、頭の回転の速さを見せるとこるが、ちょっといい。犯行はほぼ、彼が想像したとおりの構図なのだが、その裏側にもう一枚あって、なんとかサスペンスの格好になっている。なんとなく想像はついてしまうのだが。
むしろ、誘拐には官憲が絡んでいることが多い、とあっさり言ってのけてしまう社会背景に、平和な国の住人としては複雑な気持ちになったりする。
妻役のベレン・ルエダさん、「ロスト・○○」シリーズみたいな邦題が付けられた映画に続けて出ているらしい。確かにちょっとこう、人によっては、ツボにはまる感じの女優さんではあるかも。
こういった実力のある俳優さんが揃って展開する映画は、話の筋がどうであれ、それなりに楽しめるのがいい。その人を見ているだけで場が持つという、「フェイク・クライム」のジェームズ・カーンみたいな。
まあ、そういう楽しみ方でいいのじゃないでしょうか。
この映画で特筆すべきは、むしろ、舞台になったアパートメントの美しさかもしれない。階段室コアが二つあって、どちらもなかなか趣のあるつくりな上に、フロアに立つと互いに見え隠れして、いい空間になっている。それが、さりげない背景として画面にはまっている。うらやましい。
こういうのに比べると、日本のインテリア空間は、まだまだだなと思わざるを得ない。