「ジャッジ 裁かれる判事」
訴訟大国と呼ばれる国で、42年間、小さな地方裁判所の判事を勤めてきた男の、法の下に公正であろうとする態度と、内に秘めた家族愛・人間愛の発露を見られる。割といい作品。
都会に出て経済的に成功した息子が、事情あって、田舎の父の元でしばらく過ごすうちに、成功と引き換えに失ったものに気付き、Uターンを決意するお話でもある。その意味で定番中の定番。
定番のしっかりした構成の中で、本作で光るのは、判事として地域の重責を一身に背負って、息子に厳しく接してきた父の、本当の愛情。それが、ありきたりな状況の中ではなく、法廷の証言台という緊迫した舞台で、静かに明かされる。一生のほとんどを法廷で活動してきた男が、その真心を語る場として、まことにふさわしい。感動しました。そこに至るまでの長い道のりの作り方、話の落とし方も、うまい。泣ける。
ロバート・デュバルの存在感はもちろんだが、特にヴェラ・ファーミガのよさを再確認できた。「フェイク・クライム」のときよりは若い役だが、年輪を重ねた女性の落ち着きとかっこよさが出ていた。ロバート・ダウニー・Jrは、いつもどおり、やんちゃで頭と口のよくまわる役柄。そういうのがはまっているのだろう。
IMDBでの評価も7.5とそこそこいい。それなのに、日本での上映館が少ないのは残念。映画館も寡占化が進むと、いい作品が多くの人の目に触れにくくなる弊害も、感じなくはない。