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2015.01.01

「6才のボクが、大人になるまで。」

子どもが大人に育つまでには、親の側にも子供の側にも、いろいろなことがある。そのことを、映画という手法を使って、俳優が実際に子供(子役)から大人になるまで足かけ12年、根気強く活写した傑作。


家族内でのたいていの事柄は、進行中は重大事で、対立があれば結構傷ついたりもするものだ。ましてやそれが、経済的な苦境であったり、住み慣れた家を手放す落胆であったり、離婚という破綻であったりすればなおさらだ。

ところが、少し時間が経ってから思い出すと、不思議なことに、そうした過去の辛さや痛みは薄れて、ひとつの懐かしい思い出に変化することがある。その感じがとてもよく出ていた。まるで、何かの記念日に集まって、アルバムを見ながら昔話をしているような、不思議な気持ちになる。

それでいて、画面の中の風景や人物は、アルバムのようなセピア色ではなく、とても生き生きしているのだ。こんな作品は、そうはない。

もちろん、そんな空気を出せるのは、苦労の末の現在がそれなりに満足のいくものだからだろうとは思う。その点で、この母親の粘り、度重なる不運にも挫けないエネルギー、子どもたちへの深い愛情には、静かに心を打たれる。同じように粘り強さもエネルギーも愛情もあって、けれども良い結果にはつながらないことも、よくあることを思えば尚更だ。この家族には、ある種の祝福すら感じる。そして、こうしたことどもが、変にドラマティックに強調されずに、淡々と、普通の人の営みとして描かれている。

元旦に見て、母の愛と子供の成長を思い返すには、まことによろしい具合の良作でした。
男親がダメダメ揃いなのは、まあいつものこと(笑)だからよしとしよう。それでも子供は立派に育つのだから。

Pic05

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