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2014.12.22

「毛皮のヴィーナス」

マゾの語源になっているマゾッホさんの小説をネタに作られた戯曲の映画化、という成り立ちの作品。監督も80歳にもなると、こういう映画もつくるのかー。渡辺純一みたいだわ。そういう方面にうといので、感想も書きづらい。想像で迂闊なことを書くとアブナイい人認定だし。

演劇的で濃密な空間で、数人の登場人物が、言葉を交わしながら劇は進行する。こういう形式はわりと好み。「スルース」など思い出す。あちらは、男二人のつばぜり合いだったが、本作は、男と女の闘い。

男の方は、繊細で、建前ベースで見栄っ張り、つまり普通の男。やや芸術臭を漂わせて、それがプライドになっている脚色家。
女の方は、厚かましく、本音ベースで変幻自在、つまりこれも普通の女。高貴と下賤を巧みに切り替えて使いこなす曲者役者。

この二人が、攻守を、あるいは立ち位置を変え、台本に書かれた世界と、現実のがらんとした劇場と、二つの世界を行ったり来たりしながら、官能的で玄妙なやりとりを紡いでいく。

男の方は、自分が書いた作品を声に出して読んでいくうちに、次第にその作品世界に取り込まれていってしまう。声を出して読むよう男に対して強要するのは女の方だが、こちらはその効果を十分知ったうえで男を罠に嵌め込んでいく。女の方が一枚上手。

ちなみに、書かれた世界と現実世界を織り交ぜる手法は、「危険なプロット」で堪能したが、本作はあれほど混濁はしていない。役者のオーディションという形式を通して、現実感はしっかりある。

描かれるのは、Mの態様と見せて、実はその対極のSの相互依存性。MはMだけで成り立たないのだ。言われるまで気づかなかった。

それに加えて、芸術に名を借りた女性蔑視を辛辣に告発。ここはかなり現代的。

作品世界への取り込みも、女性蔑視の告発も、いずれも一撃ではなかなか壊れないところを、懐柔と服従要求を繰り返しながら、徐々に籠絡していって、最後に強烈なのをお見舞いする。

繰り返すが、そういう方面に疎いので、ほーそーですのか。と言うしかない。
きっと、心にぐさりと刺さるものを感じる人もいるのだろうか。

観客はなぜか、年配のおっさんが多い。これも謎だが、なんとなくわかる。自虐的なのかな(笑)。※有楽町で見たのだが、Bunkamuraで見た人の話では、そちらは女性が多かったらしい。うーむ。

Pic02


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