「天才スピヴェット」
天才級の小学校6年生が、普通の子供と同じような悩みに直面しながら、普通ではないアウトプットを世に出していく過程のお話。発明品に対して与えられる権威ある賞を受賞し、博物館での受賞スピーチをするために、一人で大陸を横断する旅に出る。ロードムービーというか、そういう形式。
様々な出会いを通して、世間というものを知るというのが、この形式の基本。この作品の場合も、かなり類型化された人々が登場する。そのキャラクタの描き方が写しだす、作り手の世界観を楽しむのが本筋だろうか。浮浪者とか警官とかトラックのドライバーとかに向けられる眼差しは、基本的に暖かい。渡る世間に鬼は無し、といったところ。
それは、旅の終わりに登場するメディア関係者においても同じだ。この職業が批判的に描かれるのは毎度のお約束だが、浮薄ではあるけれど腹黒いわけではなく、ただ少し思慮が足りずに時間に追われてその日を生きているだけ、という捉え方。父ちゃんのパンチで軽く撃退。
博物館の事務屋トップだけは、少しだけ悪巧みの色を付けているが、こちらは母ちゃんのパンチで撃退。
いい父母に守られたいい家族というレガシーな幸福感。
ぬくもりをじんわり感じさせてくれる、悪くない一本。