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2014.11.22

「インターステラー」

マシュー・マコノヒーもアン・ハサウエイもいい味を出している宇宙もののドラマ。これがネタバレ禁止とは辛い。とはいえ、初めの方でなんとなく筋は読めた。秘密めかすのはマーケティング戦術だから、大目にみたい。

SFは Sense of Wonder だというけれど、それは最初に降りた星の壁のようなアレで一番よく出ていたように思う。良く知っているものなのだが、たたそれが桁外れにありえない。「高い山」は普通にあるけれど、「リングワールド」の「神の拳」が普通じゃないように。あるいは「ロシュ・ワールド」の・・いや、それはネタバレすぎるか。

映像的なよさはここが一番だったと思う。

そのあとは、まあ普通にありそうな展開。最後のところは、少しオカルト風。高度に発達した技術は魔法と同じだそうだが、この映画ではむしろ、オカルトと同じになっている。

そのあり得ないことを土台にして、感動の人間ドラマを構築しているのが、ちょっと泣けるところ。たとえば「シックス センス」あたりにも見られた手法。伏線として、前半の哲学めいた雰囲気と終末感づくりが効いている。「2001年宇宙の旅」を見ているような。

話の展開はいろいろ突っ込みどころが多いが、ドラマ部分を観ていればそれほど悪くない。アン・ハサウエイの大きな大きな少年のような瞳を観ていれば幸せに過ごせる。そうやって見ていると、結末もしっくりくるのでお薦め。

いまどき一風変わった作風の一本。としておこうか。

Pic03

ブラックホールに足の方から吸い込まれると、頭のてっぺんと足の先とで、受ける重力の大きさが違いすぎて、体が強力に引き伸ばされて一巻の終わり、ということだったと思うけど、まあ、その種のまじ突っ込みは無しでお願いします。(空間そのものがひきのばされるのだったら、その中に存在している(マッピングされている)体は何の影響も受けないかもしれないし)

この先は、本当のネタバレです。
ネタバレが致命的に感動を殺いでしまう作品は、感想が本当に書きづらい。

[追記]
この作品の真の感動は、時間の流れにある。
地上の人々の普通の時間の流れと、宇宙を旅する人の時間の流れ。そのギャップと、一瞬の邂逅、そして別離。

ほとんど起こり得ないわずかな偶然が、異なる時間を生きる人と人を引き寄せ、出会わせる。そしてすぐに訪れる別れ。

宇宙の永遠に比べれば一瞬でしかない人間の生を、いやでも感じざるを得ない。

年老いた娘は、死が近づくなかで、ついに出会えた、若いままの父に、最後に言う。

「いいえ、あなたはここに居なくていい。私には子供たちがいる。
それよりも、あなたを待っている人がいるはず。彼女はいま、永い眠りにつこうとしている。
行ってあげて。彼女のところへ。」
地上の時間を生きる娘と、宇宙の時間に乗りあわせた父の、今生の別れ。同じ宇宙の時間を旅する人どうしの絆。

これこそが、本物の Sense of wonder 。
目頭が熱くなります。
このくだりの、シーンの切り替えがまた、実に巧み。

時間がからむSFの毎度の手なのだが、またやられた。

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