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2014.09.14

「わたしは生きていける」

青春小説が原作というだけあって、それらしいジュブナイル。必ずしもハッピーではないが、それでも生きていく姿を、乾いた目で描いている。好みによるが、私は好きな種類の映画。以下ネタバレ。


ユートピアのような暮らしを描くのが前半。実際、自由に生きている子供たちの世界が眩しいくらいに生き生きしている。主人公はそのなかで、ひとり影を帯びているが、それも陽だまりのような暮らしの中に包まれて癒されていく。

ところが、一転して世界は暗転。夢も希望も感じられない世界の描写が、前半との対比で際立つ。光の中で育った子供たちは、次々斃れていく。一旦は手にしたかと思った陽の当たる暮らしが、砂上の楼閣のように崩れていく。
前半と後半、主人公にとって、どちらも現実だ。違いは、前者は簡単に壊れてしまうということくらい。

これは確かに青春映画ではあるけれど、同時に戦争の意味合いや色合いを伝える映画でもある。リアルな体験談が色褪せていく中で、それが一旦起きてしまうとどんなことが続いて起きるのかについて、こういった手法での伝え方は有り得る。映画の作り手がそれを意識しているかどうかはよくわからない。ただ、単にジュブナイルで片づけてしまう以上のものを、この作品は持っているとはいえる。

「グランド・ブタペスト・ホテル」では、渋い役柄がうまかったシアーシャ・ローナンが、スッピンで本領発揮。「ビザンチウム」でも、ネクラな美人役がよかった。この女優さんの、若いのに枯れた味わいを出すうまさがとてもよい。

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