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2014.08.02

「チョコレートドーナッツ」

障碍者のこどもを、二人のゲイが里親として引き取って家族として暮らす、実話に基づいたお話。世間の偏見もあって、その暮らしは長くは続かず、最後は少し哀しい終わりを迎える。それを、激さずに、むしろ、一緒に過ごした時間の豊かさを、淡々と訴えかけるように描いている。以下ネタバレ。

感想は書きづらい。障碍者の話は、健常者の目線で語られざるを得ないことが多く、かわいそうね、というものになりがちだ。それが悪いというのではないのだが、どうも落ち着かない。偽善とかありきたりな批判をする気は、もちろんない。

薬物中毒で育児放棄の母親と、赤の他人でおまけにゲイだが親身になってくれる二人の男と、どちらにこの子を預けるのがよいのか。そう問われて、正解を出せる人間などいない。

それでも、判断を下さなければならない司法関係者であれば、問題が仮に起きた場合に、法に照らして判断の正当性を主張しやすい方に傾くのは致し方ない。それが法治の意味合いであり、accountability というものだろう。

主人公たちは、その法制度の枠からこぼれてしまう子を救いたい、という。法廷ではそういう言い方にしかならないが、本当は、そこにあるものが愛なのだろう。

対立する弁護士がいみじくも言ったとおり、愛を求めているのは、障碍児の方だけではなく、引き取り手の方でもあるのだ。それを、子供を母親から引き離そうとする身勝手な主張と受け止めるのが、世間一般というものだ。

個別具体の愛のケースに対する無理解。
主張がかみ合わないのも無理もない。


映画は、しかしそうした理屈っぽさはさらりと流して、この子と里親との充実した1年間を引き立てるように描いている。観ていて心が温まる、そういう作品に仕上がった。

どこかで、そういう場面に出会ったら、ギャレット・ディラハントの歌声と一緒に、きっと思い出すだろう。そういう価値のある一本。

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