「ジゴロ・イン・ニューヨーク」
ウッディ・アレン、前作はなんだか恋愛ものじゃなかったよなー、ということで口直しに観に行ったら、彼は監督ではなくて出演者。監督・脚本はジョン・タトゥーロという人。それでもってこの人、主役でもある。
見ると寡黙なダンディ。この地味目なおっさんが、しかし恰好いい。ウッディ・アレンのおとぼけ役とナイスなコンビ。この二人であと何本か作ってもらいたい。
原案の妙味はタトゥーロだが、脚本にはウッディ・アレンのフィードバックが大いにあったそうだ。結果、タトゥーロの言葉を借りれば、「絶妙な」映画になった。
お話は、ニューヨークの戒律厳しいユダヤ社会で尊崇を集めるラビの未亡人と、この渋めのおっさんとの、淡い恋と別れを描く。十分オトナどうしの間に生まれた、プラトニックラブ。ぐっときます。背景に、それと正反対のジゴロという商売を置いたのが、絶妙。
おっさんは、ウッディ・アレン演じるマレーとコンビを組んで、本業の花屋の傍ら、高収入女性相手に副業のジゴロもこなすわけだが、歳のいった女性たちの玩具ではありながらも、仕事は仕事、男は男、みたいに飄々としている。馬鹿ではないのは、ユダヤ人街の自警員への対応でわかる。ただ、口数が少ないのだ。女性への気遣いは、一級品。家事も自分でこなす優男。
彼の寡黙さを補うように口の減らないのが、いつもどおりのウッディ・アレン。作品の中で主役の相棒として振る舞いながら、実はナレーションの機能を果たしている。
その減らず口で何をいっているかというと、みんな寂しいんだよ。だから恋するんだよ、ということらしいのだが、コメディアンみたいにぺらぺらしゃべって、まるで心に響かない。
それでは、これでどうだ、と言わんばかりに、作ったのがこの作品の見せ場。どんな風かは見てのお楽しみ。
ニューヨークのユダヤ社会を少し誇張したような(それともあのとおりなのか?)背景描写も興味深い。
おとなの純情、日々生きる糧、みたいなものに、ちょっぴり暖かい気持ちになる一本。
観た後で、公式サイトの production note を読むと、さらに味わいが深まってお薦めです。
http://gigolo.gaga.ne.jp/notes.html
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