「300 帝国の進撃」
ザックスナイダー120%! きょうび、これだけふっきれた映像はそうそうない。やっぱり世間の良識とか恐いからね。でもこの作り手は違う。容赦しない。それでいて、美を感じさせる。アブナイわー。
以下、いきなり最大の山場のネタをばらします。
ちょっと待ったー! という方はすぐに戦場へ。いや、劇場だ。
追いつめられたアテネ海軍、スパルタの援軍もなく、ペルシャの大艦隊に最後の抵抗を試みます。軽装だが船足だけは速い船を駆って、敵の大船に体当たり。乗り移って白兵戦に持ち込みます。あっと驚く隠し技で、敵の司令部に肉薄するアテネの戦士。
甲板での斬り合い殴り合いもたけなわとなって、ついに大物どうしの一騎打ち!
かたやペルシャの女提督、凶暴冷酷残忍ぼいん! 剣の腕ではペルシャいち!
こなたはギリシャの戦争屋、冷静沈着ぼっちでマッチョ! 熱いハートはギリシャいち!
数合の激しい討ち合いの末に互いに放つ必殺の一撃は、相手の喉笛でぴたりと止まる!
男:「俺を殺してしまったら、戦う(遊ぶ)相手がいなくなるだろう?」
女:「ふむ・・ それもそうだな」 (せりふなし表情だけで!)
ってそれどこの銀英伝なのかーっ! (笑)
なんかね。血沸き肉躍るわけです。
わたくしの中の厨二病はたいへん満足いたしました。
この後、男が言う台詞がまた、勝気な女心にぶっすりと刺さるわけです。
素晴らしい。
え? 本物の女はそんなせりふ鼻で笑うって?
そう思う方は劇場で。
その台詞を無理なく言わせるために、いろいろなシーンを積み上げてきているんだよね。
緻密だわ。そこがB級とそれ以上とを分けるところ。
この作品は、それ以上。
いやーまたときどきやってほしいわこれ。
前作の「300」では、スパルタのレオニダス1世が奮戦空しくテルモピュライで負けるお話だったが、これを契機に大国ペルシャになびく都市も増えたそうだから、実はアテネもスパルタもかなり追いつめられたわけだ。
要衝であるテルモビュライを通過したペルシャの大軍は、順調にアテネも攻略。アテネ人は、サラミスほかに逃げ散る。
ここで、本作の主人公テミストクレスの名前が登場。wikipediaの記述はこうある。
「ペロポネソス半島の諸国は、アテナイが制圧された以上、アッティカ半島の防衛は不要と考え、イストモスに防衛線を築くことを主張した。しかし、テミストクレスは断固反対し、敵味方双方を篭絡して、なし崩し的にサラミス水道での海戦にこぎつけた。ギリシア連合艦隊をまとめあげることに成功したテミストクレスは、地の利を生かしてペルシア艦隊を破った。」それが、今作のクライマックスの海戦。
テミストクレスという人はかなり策士だったようだ。ギリシャ連合軍が、イストモスに戦線を移そうとしているのを、敵方のクセルクセスに密告して、ギリシャ軍の逃げ道を塞がせ、同時に、自軍に対しては、戦うしかないという結束に追い込んでいったようだ。戦闘ではこの地域特有の風と高波を利用して勝ったとされる。
その後も、クセルクセスに使者を送って、ギリシャ軍の追撃をやめさせたのは自分だと売り込んでみたり、手に入れた海軍を使って、周辺の諸都市から貢物を取ったりしたあげく、陶片追放でペルシャへ逃がれたとか。
ともあれ、この海戦の敗北で、クセルクセス1世はやる気をなくして国に帰る。とはいえ、軍勢と指揮官は残していくから、ギリシャ諸都市は相変わらず強国ペルシャの圧迫を受ける状態に変わりはない。
ということで、次作があるとすれば、ギリシャ連合軍が、最終的にペルシャの駐屯軍を追い払う「プラタイアの戦い」を取り上げることになるのだろう。
一応、史実(というかヘロドトスの記述)によれば、陸上の戦いではギリシャの重装歩兵密集陣が効果を発揮したそうだから、映画に出てくるような、半裸のギリシャ戦士が個々に剣を振るって戦うというのは、少々嘘があるのだが。まあ、いいよね。この映画面白いし。
次、やるかなあ、やってほしいなあ。
図はwikipedia「サラミスの海戦」より。