「17歳」
主人公の複雑な心のそれぞれの面を、彼女と関わり合う人達をそれぞれに描きながら見せていく。言葉は少なく、映像で微妙なところを語る。これこそ映画。繊細で緻密で多方面に奥深い。
"STYLISH, WELL-CRAFTED & INTELLIGENT"という評は本物。以下ネタバレ。
最初のドイツ人の青年はやりたい盛りのちょっとバカだが、実は主人公自身が、それにちょうど見合うくらいのウブな少女。
その後何度か関係を持つ高齢の男は、女が自分のどこに価値があるか気付いていくバロメータ。最初は若い肉体に、その後次第に別のものに。あるいはファンタジーだったのかもしれない何かに。
同級の男の子は、真面目で普通の女子高生である自分に相応な相手。そういう面もあることは、女友達とのやりとりの中に見える。
客となる男たちのうち、残りの二人は、金に纏わるちょっとしたエピソード。彼女が性を売るのは、心がどうとか”だけ”ではなく、単に自分のお金も欲しいのよ、という側面を、さりげなく表す。それを否定しない。
見ている方は、彼女の行状が様々な側面を持っていることを順繰りに見せられて、次第にこの美しい17歳の中に深味を発見していく。それは、最初から彼女の中にあるというよりは、経験を重ねることで、形作られていくのかもしれない。
ちょうど、男の子が、冒険を重ねることで成長していくように。
精神科の医師は、彼女の理解者だ。娘の裏の貌を知って頑な態度を示す母親に向かって、それでも、稼いだ金は彼女のものだと指摘する。
最後に登場する驚きの人物もそうだ。自分もその年頃でもう少し勇気があったら、と吐露することで、彼女の最も複雑な部分に理解を示す。嫉妬すら覚えるその価値を認める。
これだけでも、もう6種類もの彼女の内面を、じっくりと映像で見せてもらえるわけだ。これで満足しないわけがありません。
一方、彼女の家族の方も味わい深い。さりげない気遣いのできる母親と、基本ネアカだが素晴らしい安定感を見せる義理の父親、そしてなにより、まだ男になっていない弟。この家族の存在が、この映画を安定したコクのあるものにしている。青春の過ちなどという陳腐で浅薄な評を退ける。
複雑な心の動きを、ごく短い映像と言葉の中に結晶させ、緩やかに無理なくつないで作品にしている。このフランソワ・オゾンという監督、これからも目が離せません。大仰な身振りだけの監督達とはレベルが違う感じ。
あ。この人はゲイの人なのか・・・
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