「ホワイトタイガー」
第二次大戦頃のロシアの主力戦車T-34の集団が、たった1台のティガーと思われるドイツ軍の無敵戦車「ホワイトタイガー」に散々に打ち負かされる。その敗残の生き残りである、不思議な能力を持った戦車兵が、特製の改良型T-34を得て、ホワイトタイガーを退治するというお話。
主人公のロシア戦車兵の能力といい、ホワイトタイガーの神出鬼没ぶりといい、理屈で説明のつかない不気味さを醸し出している。はじめは劣勢だったロシア側が、何度かの戦闘を経ながら、劣勢を逆転し、ついに宿敵の砲塔を破壊して勝利をおさめるものの、とどめをさせず取り逃がす。
おりしも、ロシア軍のベルリン進撃が始まり、戦況は大きく動く。敗退したホワイトタイガーは二度と現れず、この奇妙な一件はいったん忘れられる。
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これだけなら、かなり間延びして退屈な、戦車どうしのバトルアクション映画で終わるところ。実際、かなり間が長いので、見続けるのに忍耐がいる。
おしまいに付いている後日譚が興味深い。作り手は、これを言いたいがために長々と砲撃戦の見せていたのかと思う。戦車兵もホワイトタイガーも、みな幻だったとでもいいたげな不思議な終わり方で締めた、その後に、問題のシーンが来る。
そこでは、欧州の人々がロシアというものをどう見ているかを、ある人物の口を借りて語らせている。内容はおそるべきものだが、このところのウクライナを巡る東西の確執など見るにつけ、こうした考えが実は広く共有されているようにも思えて、聞く者の心胆を寒からしめる。
それはそのまま、ロシアの人々の、というか、東欧より東側の諸民族の、欧州に対するひそかな恐怖と警戒の表れのようにも見える。一応、西側諸国に近いはずの日本人ではあるけれど、ロシア側の心情に共感するところも、ないといえば嘘になる。そう思わせるように、この作品は仕向けている。
最後にいきなりいろいろ考える破目になって、まあ千円の元はとったかという作品でした。
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