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2013.12.03

「ウォールフラワー」

原作は青春小説の金字塔。映画もその評に恥じない傑作。胸が苦しくなるほどに、脆さ、危うさ、切なさ、そして無限の可能性を感じさせる。誰もが自分のあの頃を思い出すだろう。以下ネタバレ。

青春映画のテンプレート的なものだったら、これほど胸苦しくなることはなかったかもしれない。「さよなら、壁際の僕」という売り文句は、その点で少しミスリードだが、宣伝としては正しい。

確かに、引っ込み思案な高校生が自立しはじめる旬な感じを捉えているのは間違いない。けれどもそれ以上に、無限の未来を夢見ることができる年頃のあの感じを、この映画は思い出させてくれる。そして、同時に不安も。
その二つの感情がせめぎあって、切なさが掻き立てられる。

キャラクタの設定も、この映画を独特なのものにしている。主人公3人組が子供ながらに負っている傷は、青春映画と呼ぶには少し重い。その重い部分の見せ方が上手い。

普通の奥手な少年のように見せながら、ちらりちらりと小出しにしておいて、ラストにつなげる。3人がそれぞれ、芸術方面に興味を持って活動していることが、この重さを味わいに変えてもいる。

正面から取り上げては、社会派映画のように堅苦しくかつ教訓めいたものなってしまうところだが、そうはしていない。少年から青年期の、生きにくさのひとつとして、葉っぱやら恋やら友達関係やらの中にはめ込みながら、注意深く扱っている。これはまさに、当事者の年齢の目線だ。大人目線でことの軽重を決めてはいない。

それは克服できる過去のひとつであって、彼と彼女のその後の人生に必ずしもマイナスとは限らないような、そういう描き方が、とてもいい。さらに二人の絆の形成にも生かしている。なるほど小説を読んだ若者たちから手紙が何百通もくるわけだ。

ピックアップトラックの印象的なシーンを、初めの方と最後とで、二人の役を違えて繰り返すことで、順繰りに巣立っていく様を見せているのも、にくい。この最後のシーンの、夢と不安の混じり合った空気感はどうだ! 匂いまで感じられそう。

もちろん、このラストシーンの感動は、それまでの話の流れが、十分練り込まれていてこそのものだ。この映画は、脚本と演出、大技と小技、話の順序、背景人物設定と役者の個性技量、それぞれが有機的に結びついて、共鳴している。一体になって作品として立ち現われているのだ。

このところ少し、傑作という言葉を安売りしている自分だけれど、そしてエマ・ワトソンやローガン・ラーマンをやや贔屓目に見ている自覚もあるけれど、それでもこれは傑作だと、言い切りたい。

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