「かぐや姫の物語」
こうして見せられると確かに、既成社会の枠組みから見たかぐや姫は、わがまま娘以外のなにものでもない。その見方自体に対する批判精神は、もののけ姫含めジブリの伝統芸だから、まあそれを見に行く映画と思えばいいだろうか。
以前、尾崎豊の「盗んだバイクで走り出す~」の歌詞に対する滑稽な批判があったけれど、この「かぐや姫」も、少しきわどい線を、一瞬だけ踏み越えている。気にせずどんどんやってもらいたい。だいたい、かの記憶に残る名作「ルパン3世 カリオストロの城」も、主人公は泥棒だし。w
ただ、このお話ではそれを罪と罰の枠組みで捉えているフシもあって、いくらか進化・・というか変化しているようでもある。
たしかに、貴公子たちの言葉も心も浅いのだが、それを逆手にとって彼らを窮地に追い込む、利発なかぐや姫のかすかなうすら笑いには、下界の人間すべてを蔑み嗤う底意地の悪さが滲み出ている。その悪しき思いが、彼女の罪。
とはいえ、その後の、ミカドのオレオレぶりを見ると、まあどっちもどっち。
絶世の美女の上から目線が見逃した下界の良い点に、彼女は後になって気付くのだが、後悔先に立たず。子供の頃は知っていたのに、なぜ忘れてしまったのだろう。
そんな自分に、かぐやは自己嫌悪を感じただろうか。そこが、反省のなさそうなミカドたちと、かぐやとの違い。
わかりやすい。
* * *
それにしても、かぐやを迎えに来る、あの・・なんというか・・・ちんどん屋さんでしたかいやいやこれは失礼。
そこがなあ。残念すぎる。
あれなら、いっそ、未知との遭遇のUFOの方がよかった気もする。絵のタッチからするとそれも無理だろうけど。
でもあれはないわー。なぜそこでインド風? 不自然すぎて笑ってしまいそう。
かぐやを喪う翁に感情移入して号泣しそうになる気持ちを、一発で醒めさせて体面を保ってくれる効果はてき面でした。
え? そういうために入れたの? まさかねえ。
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