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2013.11.16

「悪の法則」

殺伐とした世界設定の中で、ストーリーよりはキャラクタを見せる。比喩的で難解な会話の中に味わいを見出す類の、大人の映画。見て気分のよい作品とはいい難いが、さすが一級の役者を揃えただけの効果はある。以下ネタバレ。

この世界観に似たものを、どこかでみたことがある。「No Country for Old Men」だ。徹底的な弱肉強食の世界の中で、その非情を知らず、あるいは甘く見た挑戦者たちが、次々に滅んでいく様を描いていた。それでも、「No Country ・・」には、老保安官をうまく絡ませて、多少の救いを持たせていたか。本作にはそれもない。

原題は"COUNSELOR"だが、法律顧問というものが、知恵者ゆえに、先進国の近代的な社会とは異なる国の無法な側面を甘く見ている様子を描き、その破滅を醒めた目で追っている。

甘く見ているのは、法律家だけではない。金に貪欲で違法な取引に手を染める男、金は人並みに欲しいが命の方が大切だと知っている男、仲間の二人いずれもが、自分だけはその世界の非情さの餌食になるとは思っていない。想像力が欠けていたり、逃げ足の速さに自信があったりで、内心見下している法律家と自分とが、五十歩百歩であることに気付かない。

その彼らから見てもさらに大甘なのが、この話の主軸になるCOUNSELOR。愛する女に求婚し、身の丈に合わない指輪の費用をひねり出すために、悪人どもの話に乗ってしまう。危地に陥っても、真実を話せば法律が自分を守ってくれると信じている彼を、仲間の二人は憐れみとも蔑みともつかない態度で突き放している。

罠が発動し、それぞれに逃れようとするが、この世界の非情さは、獲物の弱点を容赦なく突くところに表れる。命の危険が迫っていても、とりあえず酒と食べ物の方を優先させる強欲な男。逃げ足に自信はあっても女には目がない点を利用されて情報を巻き上げられとどめを刺される自信過剰な男。そして、求婚相手という致命的な弱点をはじめから持っている男。それぞれの破滅を見るのが、この映画の見方だろう。

法律家が、求婚の指輪をダイヤ商から買うときに交わす会話が、意味深だ。「完全なダイヤとは、透明な空気と同じ。不純物が入り色がついて、はじめてダイヤは価値を持つ。人はダイヤの欠点だけを見て価値を決める」

それぞれに破滅する男たちの欠点こそが彼らの価値であり、それが破滅のトリガーでもある。つくづく嫌な映画でした。(笑)

ハビエル・バルデムとキャメロン・ディアスは、比較的わかりやすい役柄。極端に吹っ切れているので、特色を出しやすい。それぞれに役者の個性にもマッチしている。その線に沿って最大出力でOK。

凄いのは、ブラッド・ピット。彼が演じる男は複雑だ。悪事に手を染め大金を稼いでいながらも、いざとなれば金を捨てて命を拾うことのできる醒めた男。同時に、常に何かに怯える臆病な男であり、それを他人に悟られないように、冷静沈着に見えるように気を使っている。最初の登場場面の、ちょっとした表情と仕草だけで、この男の内面の複雑さを、的確に伝えている。こういう人物像の表現は加減が難しいはずだが、それをあっさりやってのけている。彼の凄さは、これだけのスターが揃った中でも、ひときわ目立っていた。

Pic01

[追記]
公式サイトを見ると、脚本を書いたコーマック・マッカーシーという人は、実は「ノーカントリー」の原作者でもある由。
どうりで同じ匂いがしたわけだ。

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