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2013.10.14

「ダヤニ・クリスタルの謎」

ラテンビート映画祭というのをやっていて、そのうちの1本。中米からメキシコを経由してアメリカへ向かう移民を扱ったドキュメンタリータッチの映像。”タッチ”というのは、主人公はすでに国境地帯の砂漠で死んでいて、その足跡を辿り直すという形式だからなのだが。

移民の国と言われる米国だが、現在は、いずれ国へ帰る出稼ぎ労働力はともかく、定住してしまう移民はあまり歓迎されていないようだ。その背景について、映像は何も語らない。ただ、残された家族の様子や、道中の移民仲間とのやりとりが描かれるだけだ。少し食いつきが足りない気もする。

映像は、関係者の口からいろいろなことを語らせている。中でも、米国企業が手掛けている農業に、中米の農家は太刀打ちできないという一言は、この映画の核心だろうか。農業で食べていけないなら、ほかの職業に移ればいいと、経済学者よろしく口で言うのは簡単だが・・

映像は、国境に延々と続く高い柵を写したあと、こんなものに使う金があるなら教育に使った方がよほどいい、とも言わせている。しかし、柵を作る程度の金額と、高度に文明化された社会に適応するための教育費とでは、おそらく桁が違うはずだ。

実家の畑仕事を捨てて出稼ぎに行く理由を、この映像は、白血病の子どもの治療費に求めている。それはそれで同情を誘うけれど、治癒に金がかかる患者はどの国にも大勢いる。中南米の貧しい農家に限った話ではない。

おしまいに、主人公の遺体の身元がわかって、引き取ってきたあとの、家族全員集合の様子が出るのだが、総勢20人くらいの大家族。血色もよく、身なりも悪くなく、困窮している様子には見えなかった。


たぶん、この映像が提起している問題は、貧困ではなさそうだ。
むしろ、機会のなさ、ということだろう。

米国が、あるいは先進国が、その強い農業(産業)力で、相対的に弱い周辺国に踏み込むのは、フェアではない。教育水準や産業力を上げるには長い時間がかかる。対等に競争できるようになるには、社会全体が学習する機会と期間が必要だが、それがない。
そんなところだろうか。

Pic04

それにしても、上映前のコマーシャルが、ちとミスマッチだった。
航空会社が中米観光をお勧めする内容なのだけど、そこに出てくる客は、金持ち欧米人風。おもてなしする側は全部地元民風。本編が訴えるものとのギャップは皮肉でしかない。

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