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2013.08.25

「スタートレック イントゥ・ダークネス」

私はトレッキーではないが、スタートレックといえば、科学と知性の力で困難を切り抜けていく、ウィットの効いたスマートな冒険活劇、という印象だ。その基準からすると、本作のストーリーは少しスタートレックらしさに欠ける。人が殴り合うシーンなど、スタートレックには全く似つかわしくない。The Matrix Revolutions でも、拳で殴り合うシーンがクライマックスで興醒めだったが、ハリウッドがヒットを狙おうとするとこうなるしかないのだろうか。残念だ。

とはいえ、映像の凄さは前評判どおりだから、そういうものとして見ればいいのかもしれない。戦争屋の陰謀で不毛な紛争に巻き込まれる国家共同体という設定も、米国、日本ともに思い当たるフシもあって、それなりのメッセージにはなっている。

ストーリーは、要素を詰め込み過ぎている。見ている方は、かなり忙しく補足しながら理解していく必要がある。例えば、木星の設定はかなり唐突で無理があった。詰め込み過ぎたために、他の肝心の部分が手抜きになった感は否めない。

エンタープライズから謎の戦艦に転送した魚雷のトリックは、常人離れした知性を誇る悪役の盲点を突いて秀逸だが、これは、彼の超人のクルーに対する深い愛情を読んで逆手に取った、エンタープライズ側の狡猾さを示してもいる。だから、その狡猾さ、愛情を利用して相手を罠に嵌める冷酷さに対する、哀しき超人の憤りを、もっとじっくり描いてこそ、このストーリーは生きるはずだ。
それなのに、そこは軽くスルーして、その後のくだらない追跡アクションと肉弾戦に焦点を向けてしまったのでは、脚本の質の悪さを咎めないわけにはいかない。


もちろん、そうしてしまうと、主人公側のエンタープライズの、いささか腹黒い部分に光があたってしまうのが難しいところだ。けれども、そうした上で、それが正しい選択だったと、見る側を納得させる思想の一片を示してこそ、見る値打ちのある作品ということになる。一級の作品は、たいていそうなっている。本作がそうならなかったのは残念だ。


ベネディクト・カンバーバッチは、TV版のシャーロックホームズ、「裏切りのサーカス」の若い諜報員など、知的で線の細い役が似合っていた。本作では、スポックに対抗できるほどの知性は目立たせず、むしろマッチョで凶暴な感じを強調している。それはこの役者さんの特性を殺してしまう方向にも思えて、どうなのか。


いろいろ残念さも目に付くので、定番だからといってお薦めできるのか悩ましいところ。

Pic03

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