「オブリビオン」
お話の背景の壮大さにあまり深入りせずに、描くべきものにフォーカスを絞って、手際良く作られた逸品。無機質で二極化が完成した近未来と、ノスタルジックな過去のふたつのテイストの描き分けが楽しめる。以下ネタバレ。
タイトルからして、OBLIVION(忘却)だから、すでに半ばネタバレしているようなものだ。謎はいろいろばらまかれているのだが、話を追いながら、伏線をもとに展開を予想すると、ほぼそのとおりになるという、分かりやすく親切なつくり。
ではつまらないかというと、そうではない。2つのテイストを楽しみながら、何か忘れていないかと、ドローンの無機質が問いかけてくる。「スカイタワー」と「スカヴェンジャー」の対比、吸い取られる「我々」の海。干上がる街々。水の利用目的を巡る詐術。SF的な映像と設定で楽しませながら、実はかなり社会性の強いメッセージを明確に送り出している。映像の世界と、現実とを結ぶ触媒が、ドローンだ。
ドローンの恐ろしさの描写は圧巻。特に効果音の効果が絶大。スカヴェンジャーの地下の巣窟で、主人公の危機を救いに現れたときの、廃墟に響き渡る”ヴヴ・ィ・ー・ン”という大音響は、最後の審判を思わせる。味方には救済を、敵には絶望を、無慈悲に宣言する。「降臨」という言葉が思わず浮かぶ戦慄の光景。冒頭からしばらく続くハイテンションなSF的BGMも効いている。
このドローンに代表される、無機質で無慈悲な世界観が、最初は主人公の側にある。けれども、この彼には、別の貌もあることが次第に明かされていき、ある突発的な事故を契機に、謎は膨らみ、少しづつ記憶が蘇り、世界が転回していく。
謎の答えを事故機のフライトレコーダーに託して、お話のクライマックスで再生しながら再現していく演出が冴えている。このおかげで、最後のトリックにはすっかり騙された。未来のある終わり方が嬉しい。
トム・クルーズの生真面目さをそのまま嵌め込んで使いながら、主人公の過去の「忘却」と、金融資本主義以降の米国人がすっかり「忘却」しているものをダブらせた、賭け値なしタイトルどおりの映画。
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