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2013.06.02

「ビル・カニンガム&ニューヨーク」

「ニューヨーク アイラブユー」のような映画を、そう何度も繰り返し作るわけにもいかない。けれども、ある人物の視点から見るという方法なら可能だ。そういう切り口でニューヨークという街を見ることもできるのがこの映画。もちろん本筋は、ニューヨークタイムズ紙のファッションと社交コラム担当者の仕事ぶり、その哲学を描き出すことにある。以下ネタバレ。

「この街では他人からの認知が全て」と言い切るのは、彼の仕事のフィールドと無関係ではないだろう。彼自身が、認知の目そのものであるわけだから。

そのまなざしには偏りがない。有名とか金持ちとか話題の人とか年齢とか、そういうものとは無縁な目で、何十年も、ひたすらファッションを追っている。

生活は質素そのもの。食事も自分の衣服にも全く無頓着。珈琲は安いほどいいと言い、清掃員の作業着を着、雨の日のポンチョはビニールテープで修理し続けて使っている。仕事の自由を奪われないために、不要な金は受け取らない。

本人も言っているとおり、いわゆる変人の類。ただし、徹底ぶりが尋常ではない。ファッションを追いかけ続けることは、仕事というよりは喜びだという彼の顔は、齢80を越えてなお輝いている。

さて、それだけなら、よくある「凄い人の話」で終わるのだが、一点だけ、おや?と思うことがあった。毎週日曜は教会に行くというのだ。信仰について聞かれた時の、押し黙った顔は、その他の映像が映し出す躁状態で陽気な彼とはうってかわった何かを感じさせる。フィルムはそれ以上の追求はしないが、信仰が彼の中に占める位置については、この映像だけで十分だ。

ブレない人間というのは、ブレないための何か、習慣なり、原体験なり、なんらかの芯を持っていて、それを風化させない環境に自身を置いているものだ、ということを、ここから読み取っても罰はあたらないだろう。

何にせよ、普通じゃない人間がここにも一人いることを示した一本。

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