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2013.04.28

「ジャッキー・コーガン」

映像と効果音にキレがある。登場人物は揃いも揃ってクレイジー。そして風刺が強烈に効いている。ストーリーよりキャラクタで最後まで引っ張っていく。対話劇の多用も効いている。面白い。こういう作品をどう呼べばいいのか。以下ネタバレ。

ブラッド・ピット演じる殺し屋、ジャッキー・コーガンが、最初に依頼人と会う場面で、疑わしいやつも含めて全部殺す、と平穏な口調で、しかし粘り強く、そして当然のように、主張する場面がある。なんと粗暴な、とはじめは思う。しかし、違う。

体面の問題かと聞かれて、彼は面倒そうに頷く。疑われている賭場の経営者は、体面を失った。だから殺す。

(件数をこなせば収益も増える)
"Killing Them Softly"が原題だが、「優しく」殺す理由は、土壇場の命乞いにつきあう煩わしさを、彼は好まないからだ。
(コストは最小に)

淡々と。明快に。そして緻密に。殺人はビジネスなのだ。ここにはある種美学のようなものが感じられる。

この美学は、他の登場人物たちとの対比でも顕わになる。

顔を知られていないという理由で彼が呼び寄せた巨漢の殺し屋は、酒と女におぼれるだけの、自意識過剰で怒りっぽい役立たずだ。自己抑制ができていない。依頼人のエージェントは、重要な条件については、ボスにお伺いを立てなければならない使用人だ。自分でものごとの大枠を決められない。賭場の経営者は、みんなに好かれている。ワル達の中ではまともに見えるが、奸計を自慢げにしゃべって墓穴を掘った。賭場を襲った二人のチンピラなどは言うに及ばず。

これら、それぞれに曲者で、見ているだけではらはらするワル達を、十分な時間をかけて存在感たっぷりに描き出しながら、主人公はむしろ目立たせず、しかし際立ってビジネスライクに描いている。そのことが逆に、彼の周到さ、凄味を浮き彫りにしている。

期待して呼び寄せた巨漢の役立たずを説得する際の忍耐強さ。だめと見切った後、累が及ばない方法で厄介払いする決断と行動の速さ。依頼人のエージェントと価格交渉する前に、ひそかに競合を排除した上で条件を吊りあげて有無を言わせない周到さ。ワルといっても素人くさいチンピラに対する静かな威圧感。用済みになれば抜く手も見せずに優しく殺す手際のよさ。

見ているうちに、これはどういうやり手のビジネスマンなのかと、錯覚を覚える。

この作品にストーリーと呼べるものはないと思う。ドラマもない。だが面白い。それは、曲者キャラクタの面白さであり、それを凌ぐ主人公のケレン味のない凄味の面白さだ。

ビジネスは、結果的に非情な側面を持つ場合がある。その点をアメリカという存在に引っかけているのは、作り手の思いだろうか。

ちょっと珍しい味わいで、悪くない一本でした。

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