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2013.04.30

「藁の楯」

同名の小説が原作。物語がしっかりしているので、映画化されても安心して見られる。以下ネタバレ。

凶悪犯を移送するのに、警察車両を何十台も用意する予算があるなら、ヘリ1機飛ばす方がよほどいいと思うところだが、賞金を懸けた側の政治力を考えるとそれは危ないという、うまい線を突いている。結果、情報を秘匿して隠密行動をとるという筋書きがどうにか成立。

それにしても、金のために白昼堂々殺人OKというノリに、これほど大勢が反応するというのは、ややリアリティがない。近親者の治療のためとか、家族経営企業の存続を賭けてとか、もっともらしい理屈を、数少ない助っ人の女性タクシー運転手の口を借りて語らせてはいるが、ピンとこない。

その理由は、お話の途中ではっきり示される。「理由がいろいろあったとしても、金の話が絡むとすべてが言い訳に聞こえる」。これが、普通の日本人のメンタリティだろう。金で買えないものなんて世の中には溢れるほどあることを、現実の日本人は知っているはずだ。その程度には経済大国ではある。幸いなことに。

お話の前半は、金、とたぶん裏社会の名声、などを中心に進む。それが次第に、憎しみと復讐に座を譲っていく。こちらのほうが、殺人の動機としては純粋で強力だ。うかとすると、同情してしまったりもする。

しかし、憎悪の再生産ほど不毛なものはない。残った最後の仲間の死に、主人公がついに逆上して、護送対象をもう少しで殺しそうになるときの悪鬼の貌が、それをよく物語っている。

それを防ぐためにひとが編み出したのが、法治というものだろう。この作品のいいところは、法治という手垢のついた言葉を一言も使わずに、その恩恵を示した点にある。犠牲がでただろうって? そのとおり。犠牲は何にでもつきものだ。そうやって憎悪の根を断つ努力を、健全な社会は営々と行ってきているのだから。


さて、そんな極限状態でのお話は、日常生活にはもちろん無縁のものだ。けれども、もっと小さなことで、つまらない憎しみやねたみそねみを拡大再生産して、一度きりの人生を息苦しくしていないかどうか、少し考えてみてもいいかもしれない。

大沢たかお、なかなかよかった。氷室京介が主題歌を歌っているそうです。(実家が放火されたのはつい先月のことなのね)。エンディングクレジットで台湾ユニットが出てくるのは、新幹線関連。見掛けない車両だなと思っていたら、そうだったのか。

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