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2012.11.11

「のぼうの城」

原作の面白さを十二分に引き出した傑作。「のぼう様」こと成田長親を演じるのが野村萬斎とあっては見ないわけにはいかない。単行本の表紙のように、本来、この主人公は無表情でもっさりした外見で、萬斎の切れ者の顔立ちが与える印象と少し違うのだが、表向きは隙だらけを演じながら、裏で案外考えを巡らせている人物としては、むしろこの配役がしっくりくる。

主人公以外の役もうまくはまっている。城方の面々が土豪の趣を色濃く残しているのに対して、寄せ手は官僚色が強いという対比も、お話の面白さを盛りたてている。

それにしても、この映像は結構すごい。特撮の伝統を持つ邦画ならではというか。水攻めシーンなど、ゴジラに出てきてもおかしくないスケール感を出している。合戦場面の迫力も同様。引いたシーンは状況説明を明確にしたいときに限定して、あとはアップを意図的に多用した効果が出ている。映像の意図が明確だから、見る側の緊張感が途切れない。


戦略的に勝敗は既についているという安心感のもとで、舞台を限定して、武辺の意地や将の器、民への労わりなどを競うというお話の構成は、エンターテイメントとしてこれ以上ない肥沃な土壌。この作品の受けのよさは、そうした構成に与るところ大といえるだろう。これがもし、当事国の行方を左右するような生死を賭けた戦いであれば、そんな余裕はなくなり、もっと冷徹な論理が戦術や行動を決めていくはずだ。

その意味では、秀吉の小田原攻め自体が、そういう構図のもとにあったと言えなくもない。天下の趨勢はとうに決まっていて、その中に居場所を見つけ損なった旧来の支配層を、どう処遇、あるいは滅ぼしていくか。立場を変えれば、どう生き残り、あるいは名を残して去るか、という時代だったのだろう。忍城のエピソードは、ある意味で、その象徴だったのだろうか。

どろんこ遊び大好きの私を含め、農本主義日本人の感性を絶妙にくすぐることに成功した一本。

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