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2012.07.14

「崖っぷちの男」

最初は謎だらけで始まり、当事者やマスコミなど、いろいろな人の口を借りながら、除々に種明かしをしていく話の運びがうまい。途中でおおよそのタネはわかってしまうが、その後も、複数の人物の謎めいた行動に注視していると、クライマックスやエンディングでやっと残りの謎も解ける。最後までサービス精神を忘れないエンタテイメント。クライムムービーのシ-クエンスを切り張りしながら、話の筋も目的もまったく別の所に置いている点が面白い。以下ネタバレ。

濡れ衣を着せられた善人とその仲間たちが、金持ちの悪人に対して、知恵とチームワークで反撃、勝利する。典型といえば典型なのだが、金持ちに対する反感が充満する今の世相にうまく乗っていると言える。

主人公がビルの庇に立って、「おれは無実だーっ」と叫ぶと、はるか下の道路に集まった群衆が、うおーっと応えるのだが、それが実は「早く飛び降りて見せろー(笑)」だったりする微妙なずれが、野次馬というものの実態を突いていて笑える。

そんな世間の実態を醒めた目で見ていて忠告してくれる女交渉人の刑事が、この映画をかなり引き締めている。群衆の中には扇動者がいたり、空から降ってくるドル札のためなら公共心や秩序など気にしない者が大多数であったりするのだが、そうしたものをあてにしてはいけないという良妻賢母的雰囲気を醸し出していて好感が持てる。それでいて、いざとなると体を張ってSWATの突入を阻止する大胆さも持ち合わせていて、さてはこちらが主人公かと錯覚するくらい。

ビルの庇の狭い空間と、はす向かいのビルの人気のない空間の2箇所で進行する、二組の男女の掛け合いも、それぞれに特徴があって楽しめる。その二つが、クライマックスに向けてひとつに合流する収まりもよい。

すぐに忘れてしまいそうなあっさりした出来だが、それだけ巧みで完成度が高いということかもしれない。よい作品、というしかない一本。

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