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2012.01.22

「善き人」

原題は”GOOD”。もちろん皮肉を含んでいる。善人が、見て見ぬふりや消極的賛成、さらに保身などを経て、結果的にどのように悪に加担する羽目になるかを読みとれる。以下ネタばれ。

ここで描かれている主人公は、表面的には確かに、”善き人”だ。しかし、落ち着いて考えてみると、これは善人というよりは、”模範的な人”と呼ぶのが正しい。身過ぎ世過ぎの中で、一応善いとされている模範的な在り方をなぞろうとして、自分を失う人の話。

なぜ自分を失うことになるか。世間が言う”模範”は、ときどき変わるから。短い一生の中でそれに合わせようとすれば、必然的にストレスを抱え込むことになる。不倫相手とパーティに現れて義父に叱責される主人公に、ナチ親衛隊の少佐は肯定的に言う。「遊びであっても、子を産んで国を強くするならよいでしょう。(不倫の相手が)アーリア人であればなおのこと。」

もちろん、偽悪的に模範から逸脱することがよいというわけではない。それは模範というものに囚われている点で、模範的であろうとするのと同レベルでしかない。

ナチスという団体は、制服やバッジなどの小物、所作などの小さなことから、報道や、映画や建築なども含んだ大きなものまで、様々なメディアを巧みに使って模範イメージを操作することで、ごく普通の善良な人々を絡め取っていったということを話に聞く。この映画にも、その象徴的なシーンが劇的に示されている。自分は肩書をもらっただけで魂まで売ってはいないと内心思っている主人公が、かつてのユダヤ人の友人を救おうと混乱する中で、ついに全員招集を受けてはじめて親衛隊の制服を着てとまどう、その傍らで、アーリア人の女が言う。「鏡の中のあなたを見て。」


さて、鏡の中の自分は今現在どのような地点にいるか。ひいてはそれを考える。そういう一本でした。

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